経団連は12月16日、社会基盤強化委員会企画部会(大知久一部会長)をオンラインで開催した。目下の新型コロナウイルス感染症では、地域の感染状況や医療供給体制の把握、感染拡大地域における実効ある休業要請など、都道府県の役割が注目されている。また、近年激甚化する自然災害においては、防災・減災対策や発災時の円滑な被災者支援のため、政府や現場対応を行う市区町村、また他都道府県との連携が求められている。そこで、防災において先進的な取り組みを進める茨城県防災・危機管理部の大関裕之主査から説明を聴いた。概要は次のとおり。
災害には自然の現象としてのハザードと、その影響であるディザスターがある。人の力ではハザードを制御することはできないため、防災・減災対策とはディザスターを小さくすることである。災害対策における国、都道府県、市町村の役割は、災害対策基本法に定められている。例えば、住民への避難指示は市町村の責務となっており、国にその権限はない(都道府県は市町村が責務を果たせない時に代行する)。
茨城県では、東日本大震災などを契機に、県・市町村・消防・救急医療機関等416機関を結ぶ通信網を整備し、災害時に携帯電話がつながらない場合でも救急車と医療機関との通話を可能にするなど、情報共有できる仕組みを構築した。また、県民への情報発信のために独自のアプリを開発する自治体が多いなか、茨城県では民間のアプリを活用することで、その普及や確実な情報発信とともに市町村担当者の負担軽減を実現している。
かねて災害時における罹災証明書の交付の遅れが指摘されてきた。茨城県では、民間企業の協力のもと、全国に先駆けてモバイルシステムによる被災状況の調査を実施できる環境を整備し、令和元年東日本台風では被災後1カ月で申請数の8割以上の証明書の交付が可能となった。
これからの災害対応においては、DX(デジタルトランスフォーメーション)などあらゆる手段を活用し臨機応変に対応するスキルが必要であり、自治体と企業との連携がなお一層求められる。実証試験などを通じて、幅広く連携できる環境が必要となる。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】