経団連は12月22日、金融・資本市場委員会企業会計部会(野崎邦夫部会長)を開催し、ASBJ(企業会計基準委員会)の小賀坂敦委員長ならびに川西安喜副委員長から、のれんの会計処理等に関する国際的な動向とASBJの対応について説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 国際的な動向
IASB(国際会計基準審議会)は、ディスカッションペーパー(DP)「企業結合―開示、のれん及び減損」を公表し、12月31日を締め切りとして、市場関係者のコメントを募集した。DPは、IFRS第3号「企業結合」の適用後レビューで得られた懸念について、IASBの見解を示したもの。主な提案は次の2点である。
- (1)企業結合(取得)とその後の成果に関する情報を十分に得られないという投資家の指摘に対して、取得の目的、取得後の期間にわたる企業結合の成果についての情報(経営者によるモニタリング指標)等を、財務諸表の注記として開示すべきである。
- (2)のれんの事後の会計処理について、IFRSの減損のみのアプローチでは減損損失の認識のタイミングが遅すぎるという指摘に対し、減損テストの有効性を著しく高める提案を行うことは難しい。一方で、のれんの定期償却を再導入する新たな証拠もなく、現状の減損処理を維持すべきである。
他方で、米国財務会計基準審議会(FASB)では、のれんの定期償却の再導入に向けた議論が進んでいる。
■ ASBJの対応
わが国の市場関係者にヒアリングを行ったうえで、DPに対するASBJの意見案を作成した。
取得に関する情報開示を拡充する提案を財務諸表利用者は賛成する一方で、財務諸表作成者からは商業上の機密を開示することで競争上の不利益を生じさせるリスクが高いことなど、強い反対意見が寄せられた。このため、情報開示を拡充する環境が十分整っていないと考え、IASBの提案に反対している。
のれんの事後の会計処理に関しては、IASB提案では、のれんの費用処理のタイミングが遅すぎ、小さすぎるなどの問題を解決することができないことから、定期償却の再導入を強く主張している。米国では償却の再導入が議論されており、国際的な基準で定期償却が再導入されるよう働きかけを続ける。
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意見交換では、ASBJのコメント案に賛同する意見が出た。野崎部会長は「オールジャパンでの意見集約・発信をお願いしたい」とコメントした。
その後、企業会計部会としての意見の審議も行い、12月28日に意見をIASBに提出した。
【経済基盤本部】