経団連の日本ロシア経済委員会(國分文也委員長)は1月13日、日本政府が日露経済交流促進を目的とし、ロシア国内に設置した日本センターのうち、5カ所の所長とのオンライン懇談会を開催した。各所長による説明の概要は次のとおり。
■ 濵野道博モスクワ所長
新型コロナウイルス感染症に対し、モスクワでは厳格なロックダウンが実施された。しかし、国民投票や戦勝記念パレードといった政治イベントに向け、早期に解除されたこと等により、現在は感染者数が世界第4位という状況である。
また、新型コロナ対策による労働査証の発行停止等が日本センターの活動の障害となっている。
8項目の「協力プラン」(注1)をベースとしたビジネス交流促進については、医療、IT、生産性向上の3項目を中心に展開した。加えて、アフターコロナの観光需要復活に備えた施策も予定している。
■ 佐竹昭彦サンクトペテルブルク所長
管轄する北西連邦管区のうち、人口の40%、地域総生産の約半分をサンクトペテルブルクが占める。
新型コロナに伴い、セミナーをオンラインで開催した。以前から人気の生産性向上に加え、BCPといった災害対策関連への関心が高い。今後はMaaS(注2)、都市OS(注3)、医療現場のIT等のテーマを扱う予定である。
■ 椚田豊ニジニ・ノヴゴロド所長
2020年2月の経団連日本ロシア経済委員会ミッション派遣にあらためて深謝する。今年、ニジニ・ノヴゴロドは創立800周年を迎え、市内設備の改修工事や数々の式典を予定している。
オンラインセミナーでは、企業誘致対策、スマートファクトリーによる生産効率性向上、新型コロナ時代の観光等のテーマを扱った。ニジニ・ノヴゴロドと宮城県の交流促進事業も推進中である。
■ 石畠康充ハバロフスク所長
20年最大のニュースはセルゲイ・フルガル現職知事の逮捕拘束であった。憲法改正の是非を問う国民投票でハバロフスク地方の賛成が有権者数の27%という極めて低い数字であったことを中央政府が問題視したという説もささやかれている。
新型コロナにより活動は縮小しているが、アムール州日本協会の依頼によるビジネス交流会やハバロフスク地方行政府との貿易投資プレゼンテーション等を実施した。オンラインも活用し貿易経済分野の発展、拡大に引き続き取り組みたい。
■ 宮川琢ウラジオストク所長
新型コロナによる東方経済フォーラム中止の影響は大きかった。経済指標も悪化し、特に外食産業への被害が甚大である。
20年は週31便の航空便が日本―ウラジオストク間に就航予定だったが、週1便という現状である。一方、21年1月5日に日系ホテルの進出が発表され、今後ウラジオストクが日本人の週末観光の目的地になるという認識は変わらない。脱炭素化が進み、沿海地方の港湾役務の中心が石炭から他エネルギーに転換する際は、日本企業の新たな投資機会になると推測している。
今後も観光、ビジネス両面でのサポートに取り組む所存である。
(注1)2016年5月のソチにおける日露首脳会談で、安倍晋三首相(当時)がウラジーミル・プーチン大統領に提示した、8項目から成る日露間の経済協力プラン((1)健康寿命の伸長(2)快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市づくり(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大(4)エネルギー(5)ロシアの産業多様化・生産性向上(6)極東の産業振興・輸出基地化(7)先端技術協力(8)人的交流の抜本的拡大)
(注2)MaaS=Mobility as a Service、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせ、検索・予約・決済等を一括で行うサービス
(注3)都市OS=都市にあるエネルギーや交通機関、医療、金融、通信、教育などのデータを集積・分析し、それらを活用するために自治体や企業、研究機関などが連携するためのプラットフォーム
【国際経済本部】