経団連は3月11日、経済法規委員会企画部会(佐久間総一郎部会長)をオンラインで開催し、法務省民事局の大野晃宏参事官と福田敦参事官からそれぞれ、民事訴訟法、仲裁法等の改正に関する中間試案の説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 民事訴訟法の改正に関する中間試案
昨年2月に法制審議会総会に諮問された民事訴訟法の見直しについて、民事訴訟法(IT化関係)部会は、中間試案を取りまとめ、パブリック・コメントを実施している。
中間試案では、現状、書面と対面で行われている民事裁判の各種手続きを、データとWeb会議で行えるようにすることが提案されている。具体的には、「e提出」「e法廷」「e事件管理」の3つの柱からなる。
(1)e提出
データを裁判所のシステムに投稿し、サーバーに記録することで、訴えの提起や準備書面の提出を行う。デジタルデバイドへの配慮から、オンラインの利用が義務付けられる対象に関して、複数の案を提示している。
送達は、当事者が裁判所に届け出たメールアドレスに、データがサーバーに記録された旨を通知することで行う。
(2)e法廷
口頭弁論、弁論準備手続きともに、当事者双方がWeb会議により出頭することを認め、かつ、要件を弾力的にする。ただし、当事者が希望する場合に裁判所に出頭することが否定されるものではない。
証人尋問もWeb会議の要件を緩和して、裁判所が相当と認める場合であって当事者に異議がない場合なども利用可能とする。ただし、第三者による不当な介入への対策は、引き続き検討する。
また、裁判にかかる期間の予測可能性を高めるべく、審理期間を6カ月に限定する「新たな訴訟手続」の導入なども提案している。
(3)e事件管理
訴訟記録を電子化し、当事者や利害関係人がインターネット上でいつでも閲覧できるようにする。問題は、利害関係のない第三者も同様に閲覧可能とすべきかという点であり、現行と同じく、裁判所のみで閲覧できるとする案も併記している。
■ 仲裁法等の改正に関する中間試案
昨年10月に法制審議会総会に諮問された仲裁法制の見直しについて、仲裁法制部会は、2006年に改正された国際商事仲裁モデル法に対応する規律の整備など、国際仲裁・調停の活性化の観点から中間試案を取りまとめ、3月中にパブリック・コメントを開始する。
(1)仲裁法の見直し
改正国際商事仲裁モデル法に対応するかたちで、仲裁廷による暫定保全措置や仲裁合意の書面性に関する規律を見直す。
また、裁判所で行われる仲裁判断の取り消しや執行決定の手続き等について、東京地裁・大阪地裁に競合管轄を認める規律を設け、専門的な事件処理態勢を整える。さらに、一定の場合に外国語資料の訳文添付の省略を認める規律を設ける。
(2)調停による和解合意に執行力を付与し得る制度の創設
18年に採択された「調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約(シンガポール条約)」を参考に、裁判外で行われる調停による和解合意に、一定の要件のもと、裁判所の決定により執行力を付与し得る制度を設ける。
対象となる和解合意については、国際的な事案のみを対象とする案と、国内事案も対象とする案を併記して提案している。
対象となる紛争類型については、シンガポール条約に倣い、消費者紛争、個別労働関係紛争、家事紛争を除外することを提案しているが、今後、一定の範囲または要件のもとで対象に加えることについて検討を進めていく。
(3)民事調停事件の管轄の見直し
裁判所で行われる知財調停の一層の活用を図るため、東京地裁・大阪地裁に競合管轄を認める規律を設ける。その他の専門的な知見を要する紛争に関する調停事件の管轄等については、引き続き検討を進めていく。
【経済基盤本部】