経団連は4月15日、米国最大級の公的年金基金でESG投資(環境・社会・ガバナンス対応を踏まえた投資)をリードするCalSTRS(カリフォルニア州教職員退職年金基金)のクリス・エイルマンCIO(最高投資責任者)らとハイレベル・オンライン懇談会を開催し、CalSTRSのESG投資について説明を聴くとともに意見交換した。経団連からは、金融・資本市場委員長の太田純副会長と日比野隆司審議員会副議長をはじめ、片野坂真哉副会長ら約70名が参加した。概要は次のとおり。
■ CalSTRSのESG投資
CalSTRSのESG投資は、環境やガバナンスなどのインパクトが、投資パフォーマンス向上、受益者の利益の両方につながるという考えに基づいている。
1970年代から社会的責任に関する取り組みを開始し、さらに80年代からはコーポレートガバナンス、2000年代からは気候変動の取り組みを追加的に重視する。こうしたESG投資の取り組みは、米国の政治経済の動向に左右されず継続しており、バイデン政権で一層追い風が吹くことに期待する。
気候変動以外にも、都市化問題、スマートシティの効率性、食品やエネルギーなどの資源、また、所得や教育の格差、金融包摂性などの課題も重要と考える。特にダイバーシティは、CalSTRSの受益者の約7割が女性であることから、非常に重視している。
■ ESG投資のリスクと機会
ESG投資は、そのリスクと機会を適切にとらえることが重要である。保有資産に関するさまざまなESGリスクをマッピングして可視化し、比較可能な指標に基づいて特定・判断する。
ESG投資の機会の側面については、さまざまな技術革新のなかで、今後どのような機会が創出されるのか、例えば、どのようなエネルギーが本当に効率的なのか、などを議論し、検討を進めている。
こうした考えのもと、低炭素への移行(トランジション)を推し進めるため、ブラックロックが新たに設定した環境ETF(上場投資信託)に10億ドルの投資を決めた。新たな環境ETFへの投資としては最大級の規模と考えている。
■ スチュワードシップ活動
われわれのESG投資で「ダイベストメント」を積極的に行う考えはなく、むしろスチュワードシップ活動を通じて影響力を行使したいと考えている。具体的な方法としては、議決権行使、エンゲージメント、ポリシーアドボカシーである。
スチュワードシップ活動を進めるため、ICGN(International Corporate Governance Network)やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などのパートナーと連携し、投資家の「1Voice」(一つの声)として意見を伝えることが重要と考えている。
CalSTRSの年金受益者は女性が約7割を占めているため、CalSTRSとしてダイバーシティの強化に強い関心がある。経団連の「#Here We Go 203030」はすばらしい取り組みであり、CalSTRSとしても日本企業の取締役会のダイバーシティ推進に協力したい。
◇◇◇
その後の意見交換では、カーボンニュートラル目標達成に向けた原子力発電の活用に関する米国投資家の見方などについて活発に意見交換した。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】