経団連は5月18日、農業活性化委員会(十倉雅和委員長、佐藤康博委員長、磯崎功典委員長)をオンラインで開催し、農林水産省大臣官房から農業DX推進施策やコロナ禍での政策対応、国連での食料問題の取り組みについてそれぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 農業DX推進に向けた施策
(信夫隆生サイバーセキュリティ・情報化審議官)
生産性向上にはデジタル技術の活用が不可欠であり、農水省では、食料・農業・農村基本計画(2020年3月)にDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を明記、今年3月には羅針盤として「農業DX構想」を策定するなど、他省庁に先駆けて取り組みを進めている。
現在、農業従事者や市町村の農政担当者職員等は、煩雑な手続きに時間を要しており、申請の各プロセスをオンライン化し、データも活用できるようにDXを進めている。具体的には、農林水産省共通申請サービス(eMAFF)の構築を進めており、22年度には、地方自治体の事務も含めた3000超の手続きのオンライン化100%、25年にはその利用率60%を目指す。また、農地情報の一元管理を目指し、農林水産省地理情報共通情報共通管理システム(eMAFF地図)の開発にも本格的に着手。将来的には、農地データを活用したタブレットでの現地確認等の実現に向けて、eMAFFとの連携を検討している。ほかにも、MAFFアプリを開発し、農業者と農水省との直接かつ即時のコミュニケーションを実現するとともに、同時に得たデータを活用してスマート農業も推進したい。
■ コロナ禍によるわが国の農林水産・食品産業への影響と対策
(青山豊久総括審議官)
コロナ禍では、外食の支出額減少等による農産物相場の下落や、外国人材の入国制限などから、農業者への大きな影響があった。一方で、他産業からの代替人材の確保やオンラインによる消費者への直接販売などの新しい動きも出てきた。政府では、農林漁業者の経営継続、国産農林水産物の消費拡大、労働力確保などでの支援策等により、食料供給の安定や販路の維持に努めてきた。コロナ禍で食料自給率の向上や食料安全保障強化への期待も高まっているなか、今後も感染の発生状況等を注視し、必要な対策を講じる。
■ 国連食料システムサミット2021~概要と課題について
(本田光広国際部国際機構グループ参事官)
農業には、環境負荷への対応や持続可能な消費などさまざまな課題がある。国連はこうした課題を解決するため、「国連食料システムサミット」を9月に開催する。同サミットに向けて、参加国ではさまざまなステークホルダーとの対話を進め、コミットメントを取りまとめることとなっている。
日本政府も、すでに環境負荷軽減に向けたイノベーションの推進等を目指す「みどりの食料システム戦略」を5月に策定したが、今後は企業など国内関係者等から聴取した意見とともに、食料安全保障の確立や環境に調和した農業の推進といった、食料システム改革に資するコミットメントを取りまとめる。経団連とも連携を強化していきたい。
【産業政策本部】