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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年6月10日 No.3502 欧州AI政策の最新動向 -欧州AI法案に関する懇談会

経団連は5月17日、欧州AI法案に関する懇談会をオンラインで開催し、在欧日系ビジネス協議会(JBCE)の長宗豊和事務局長と経済産業省情報経済課の泉卓也情報政策企画調整官から、欧州AI政策の最新動向を聴いた。説明の概要は次のとおり。

■ EU域外にも適用されるAI法案の動向に注意(長宗氏)

4月21日、欧州委員会はAIの開発と利用に関する包括的な法案(AI法案)を含むAIパッケージを公表した。

AIパッケージは大きく分けて、(1)AI開発への投資支援や規制緩和等のイノベーション促進施策(2)AIの開発や利用を通じて生じるリスクに対する規制枠組み――の2つから構成されている。後者についてはEU域外にも適用される点で、今後のAI技術開発に大きな影響を与えるものとして高い注目を集めている。

AI法案は、AIシステムのリスクを用途別に4類型に分類し、それぞれのリスクに応じた要件・規制を導入する「リスク・ベース・アプローチ」を採用しており、プロバイダーや輸入者・販売者、利用者はおのおのに対応した義務を履行しなくてはならない。

しかし、現段階では個々のAIシステムがいずれの類型に該当するか必ずしも明確でないものもある。また、AIシステムそのものではなくAIシステムを組み入れた機械等に対しても、AI法案と同時に公表された機械指令改正案で新たに規制の対象とされている。こうした規制の実効性を確保するための賠償責任に関するルールも今後提案される予定である。

これらの規制に対しては、産業界を中心に、規制とイノベーションのバランス、定義や解釈をめぐる混乱、中小企業や新興企業にとっての大幅なコスト増などを懸念する声がある一方、欧州議会の一部や市民団体等からはより強い規制を求める声もある。

欧州議会・EU理事会での議論を経て、規制の成立・適用に至るまで、最短でも概ね1年半と見込まれる。その間、欧州委員会等における議論をフォローするとともに、必要に応じロビイングを通じて日本企業の要望や懸念等を打ち込んでいく必要がある。

■ AI法案に対する意見表明の際の留意点(泉氏)

交渉に際しては、欧州側の人権・安全を重視する理念を十分に理解したうえで臨むべきであり、やみくもに経済成長の重要性や企業サイズに基づく非合理性を主張することは有効でない。むしろ、理念を実現するにあたって、より制限の少ない効果的な手法を提示すべきである。

【産業技術本部】

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