経団連は5月24日、デジタルエコノミー推進委員会企画部会データ戦略ワーキング・グループ(若目田光生主査)/国際戦略ワーキング・グループ(横澤誠主査)合同会合をオンラインで開催し、総務省サイバーセキュリティ統括官付参事官補佐の高岡洋彰氏から、「組織が発行するデータの信頼性を確保する制度に関する検討会取りまとめ(案)」および「eシールに係る指針(案)」について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ eシール活用によってさまざまな業務を効率化
eシールとは、電子文書等の発行元の組織等を示す目的で行われる暗号化等の措置である。eシールの活用によって、当該電子文書が発行元の組織等から間違いなく発行されたことと、当該電子文書が改ざんされていないかを確認することができる。
従来は、押印した紙の文書を受け取った際に、送り主が送ったものかどうかを受け手が電話等で確認する手間があった。eシールの場合、受け手はPDF等の電子ファイルを確認するだけなので、業務を効率化できる。富士通が実施した実証事業によると、eシールの活用によって、例えば請求書の受領側における発行元の確認作業工程数が98%削減され、大きな業務効率化効果が認められている。
eシールのユースケースとしては、経理関係業務や契約にひも付いて発生する書類・証明書、決算短信・ニュースリリースなどの組織の公開情報、IoT機器から発するデータ等があり、幅広く活用が検討されている。法人だけでなく、個人事業主や団体も発行対象として検討されている。
■ 今後の活用の見通し
欧州ではすでにeシールの活用が進んでおり、eシールの技術基準等を定めたeIDAS(注)規則が成立している。将来的には欧州のeシールとの相互承認も念頭に、eシールを技術・運用水準に応じて3つのレベルに分ける方針である。「eシールに係る指針(案)」は、内閣官房のIT総合戦略室が検討している「包括的データ戦略」とも連携しており、今後、デジタル庁でeシールを含めたトラスト基盤の検討が進められる。
(注)eIDAS=Electronic Identification and Trust Services Regulation、EU圏内市場における電子商取引のためのトラストサービスに関する規則。eシールを含むトラストサービスの定義や法的有効性を規定している
【産業技術本部】