経団連は7月12日、東京・大手町の経団連会館で教育・大学改革推進委員会(渡邉光一郎委員長、小路明善委員長、橋本雅博委員長)を開催した。Teach For Japanの中原健聡代表理事・CEOと東京学校支援機構(TEPRO)の坂東眞理子理事長から、学校現場への外部人材の派遣・紹介に関する取り組みについて、両団体から説明を聴き、懇談した。説明の概要は次のとおり。
■ Teach For Japanの取り組みおよび社会と学校の共創(中原氏)
日本の学校現場では、人材不足を起点とした教員の多忙化、資質・能力の停滞により、教育の質の低下につながっている。職業としての教員の魅力の低下を招き、さらなる教員不足につながるという負の連鎖が起きている。この負の連鎖を断つには、学校現場への入職のあり方を抜本的に改革する必要がある。
当団体では、臨時免許や特別免許の制度を活用して、教育に情熱を持つ多様な人材を選考・研修し、公立学校に教員として2年間配置するフェローシップ・プログラムを実施している。学校現場における業務特性を十分理解していない人材が入っても、かえって現場の負担を増やしてしまうため、事前の研修を重視している。
今年度は12都道府県34市区町村に88名のフェローを配置した。同プログラムの修了生は、学校現場で教員として課題解決に取り組んだ経験を活かし、その後も学校現場を含めさまざまなセクターで活躍している。
多様なバックグラウンド、スキルを持った人材が協働する学校を構築することで、すべての子どもに適応できる教育環境を実現できる。
企業には、当団体のフェローシップ・プログラムを社員のキャリアアップの手段の一つと位置付け、学校現場へ教員として送る制度を導入してもらいたい。そうすることで、学校教育が社会に開かれたものになる。
■ TEPROの取り組みおよび企業・企業人への期待(坂東氏)
TEPROは、都内公立学校における教職員の負担軽減と教育の質向上を目的に、東京都教育委員会の政策連携団体として2019年7月に設立された。
当機構の「TEPROサポーターバンク」は外部人材の確保と紹介機能を有し、学校活動に意欲のあるサポーター(個人、企業・団体)と、外部人材を必要とする学校を結び付ける事業を展開している。また、学校現場への円滑な受け入れを進めるために、サポーターに対する研修も実施している。
21年5月末現在、個人4566人、企業・団体77団体がサポーターとして登録している。個人登録者の年齢層は20代と50、60代が多い。サポーターが希望する活動は教科指導や日本語指導、ICT支援、教職員の事務支援などさまざまである。現状、学校現場では、コロナ禍を契機にICTを活用した授業支援やオンライン学習支援等へのニーズが高まっている。
現在、教育系ベンチャー企業などが登録しているが、経団連会員企業にもぜひ登録してほしい。教育にかかわる経験は、社員にも企業にもプラスになる。
企業人がビジネスの現状について専門的な見地から学校で子どもたちに説明することは、子どもたちにとってもよい刺激となる。
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懇談後、21年度の同委員会の活動計画案を審議し、了承を得た。
【SDGs本部】