経団連は7月12日、政府が重要政策として進めるカーボンニュートラル(CN)に向けた取り組みの一環として、「木材利用の拡大を通じた都市・住宅分野のCNに向けた政府政策に関する意見交換会~CLT(注)をはじめとする木材活用促進に向けて」をオンラインで開催。官民合わせて約250名が出席した。
冒頭あいさつした菰田正信副会長は、木造建築物の普及や中高層建築物の木造化は、都市における炭素の貯蔵を促進するなど、CNの推進に資すると指摘。さらに木材利用の促進は地方創生やSDGs(持続可能な開発目標)の推進にも寄与すると述べ、期待を示した。
続いてあいさつした内閣官房副長官補付の長谷川貴彦内閣審議官も国産材活用の意義を強調。国産材の都市・住宅分野での活用策として大きな期待が寄せられているCLTの利用促進にはさまざまなセクターの連携が不可欠であり、政府として関係省庁連絡会議を設置し、一体となり取り組んでいる旨説明した。
その後、林野庁の天羽隆長官と国土交通省の淡野博久住宅局長から、各省庁の取り組み等を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ 林野庁
木材の活用は、持続可能な森林づくり、地域活性化、雇用創出、地方創生に加え、都市における「炭素の貯蔵庫」づくりをはじめとするCN実現への寄与など、さまざまな意義を持つ。森林・林業分野は、「目標15=陸の豊かさを守ろう」をはじめ、SDGsのほぼすべての目標の達成に貢献することが可能である。
木材活用の促進には、ボリュームの大きな建築物への木材利用がカギであり、非木造が中心の中高層住宅や商業・業務建築物の壁、床等の木造化がポイントとなる。こうしたなかで、十分な強度を持ち、国産材活用が可能で、施工が容易で再利用もしやすいCLTへの注目が高まっている。
政府は今年3月に「CLTの普及に向けた新ロードマップ」を策定した。さらなるCLTの利用拡大に向け、情報発信の強化、効率的な量産体制の整備、設計者の技術向上支援等の取り組みを推進している。
■ 国交省
今年3月に閣議決定した「住生活基本計画」では、2050年CNの実現に向け、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)のストック拡充や、住宅の省エネ基準の義務付け、木造住宅等の普及やCLT等を活用した中高層住宅等の木造化等を盛り込んでいる。
関係省庁(経済産業省、国交省、環境省)が連携してZEH等の推進に取り組んでおり、住宅の省エネ・省CO2化に対して、補助金、融資、税制等のツールを総動員し取り組んでいる。
また、木造建築物の普及に向け、避難安全性や構造安全性等が確認できたものについて、順次、建築基準の合理化を図るとともに、先導的な木造建築物等への支援等を行っている。これらの取り組み等も背景にCLTを活用した建築物の国内竣工件数は増加してきており、20年度に累計550件強に達する見込みである。
(注)CLT(直交集成板)=木材を繊維方向が直角に交わるように重ねて接着したパネル。中高層建築物等の壁や床として十分な強度を有する
【産業政策本部】