経団連は7月14日、企業行動・SDGs委員会企業行動憲章タスクフォース(関正雄座長)をオンラインで開催した。「国連ビジネスと人権ワーキンググループ(WG)」のダンテ・ペシェ議長から、今年6月に策定から10年を迎えた「国連ビジネスと人権に関する指導原則(指導原則)」の現状評価と今後10年間のロードマップについて、説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ 「指導原則」の現状評価
指導原則は、人権尊重における国家と企業の役割を明らかにした。すなわち、国家には人権を保護する義務、企業には人権を尊重する責任があり、異なる立場でありながら、補完的な役割を持つことが明確になった。
また、指導原則は被害者の救済へのアクセスを中核的な柱に据えており、企業は、責任ある企業活動における不可欠な要素として、救済メカニズムの構築が求められている。これにより、人権を尊重する企業経営に進歩をもたらした。
指導原則の最大の成果は、人権デュー・ディリジェンス(DD)(注)の概念を提供したことである。現在、欧州を中心にDDを義務化する潮流があり、企業はDDの取り組みをより強化する必要がある。
■ 今後の10年間に向けて
今後の10年間は、「実践」のフェーズである。新型コロナウイルスだけでなく、気候変動も含めた、現代のあらゆる危機からの責任ある回復と、より良い復興を実現するために、指導原則の実践を中心に据えるべきである。
政府と企業は、他のステークホルダーと協力し、おのおのの責任を果たす必要がある。
政府は、実効性のある法律や規制を策定するだけでなく、責任ある事業活動とDDを奨励し、被害者の救済を可能にするために、より広範な政策手段(スマートミックス)を用いる必要がある。
企業による人権への対応は加速傾向にあるが、より幅広い企業の参画を促進すべきである。今後10年で意味のある成果を達成するためには、より一貫性のある行動が求められる。これまでのビジネスモデルが人権の尊重と整合的であるかどうかを評価する必要がある。
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意見交換では、日本企業として強化すべき点に関する質問に対し、ダンテ氏は、「取締役会が、人権DDにより把握したリスクを自社の文脈で理解し、経営方針に反映することが最も重要である。そのためには取締役会のダイバーシティがカギとなる」とコメントした。
(注)人権デュー・ディリジェンス=人権への負の影響(人権リスク)を特定、防止、軽減し、どのように対処するかという継続的なプロセス
【SDGs本部】