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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年8月26日 No.3511 21世紀政策研究所が連続セミナー「G7後の世界と企業活動への影響について」を開催 -第1回「地球温暖化をめぐる内外動向と日本の課題」

有馬研究主幹

21世紀政策研究所(十倉雅和会長)は7月26、28の両日にわたり、連続セミナー「G7後の世界と企業活動への影響について」を開催した。同セミナーは、6月の主要7カ国首脳会議(G7)の結果が国際社会と企業活動に及ぼす影響について解説するもの。第1回は、「地球温暖化をめぐる内外動向と日本の課題」をテーマに、同研究所の有馬純研究主幹(東京大学公共政策大学院特任教授)が登壇。会員企業幹部300名が出席するなか、G7各国等の環境政策を解説したうえで、問題点を指摘するとともに日本の取るべき方策を現実的な観点で分析した。概要は次のとおり。

■ 1.5℃目標と2050年カーボンニュートラルの見通し

気温上昇を1.5℃に抑えるいわゆる1.5℃目標の達成には、年率7.6%のCO2排出削減を2030年まで続ける必要がある。これは新型コロナウイルスの影響による20年での減少率5.8%を上回るものである。また、各国の公表目標が達成されても50年のカーボンニュートラル(CN)には及ばず、1.5℃目標実現の可能性は低い。

■ 欧米の環境政策・環境外交とその問題点

1.5℃目標と50年のCNを絶対視する欧州は、G7、G20、COP26すべてが欧州開催となる今年を温暖化防止の転換点とすべく、また民主党政権となった米国も、リーダーシップを誇示すべく、それぞれ積極的な環境政策を主導する。しかし、これらの化石燃料排除論は、温暖化防止の優先度が高くないアジアの新興国の実情を考慮していない。また、現実的でないトップダウン型目標の絶対視は先進国・途上国対立の再燃をもたらす。中国がこの状況下で、クリーンではない技術でグリーン産業を育成・発展させる可能性がある。

■ 日本のグリーン成長戦略

経済産業省は、CNに向けて非電力分野の電力化と電力の脱炭素化を進めるとしたうえで、これらを実現するために、再エネ、省エネ、水素産業、自動車・蓄電池産業、運輸関連産業、住宅産業、およびこれらをつなぐ情報通信産業等のイノベーションを促進する「グリーン成長戦略」を策定した。ただし、イノベーションは民間投資が肝になるため、すでに主要国中で最も高い産業用電力料金の上昇をいかに抑えるかがその余力を確保するうえで重要である。日本経済が不均衡に高いコストを負うことがないよう注視する必要がある。

■ エネルギー基本計画素案と日本の選択肢

温室効果ガスを30年度に13年度比で46%削減する新目標はトップダウン型であり、その達成を目指した基本計画の素案には苦労の跡がうかがえる。現実の取り組みはエネルギー自給率回復、電力コスト低減、環境保全のバランスを考慮したボトムアップでしか進まない。脱炭素化はコストを伴い、経済成長と常には両立しないことを踏まえると、再生可能エネルギーに関して欧米に比べて不利な条件を抱えた日本は、現存する原子力発電の利用など、使える脱炭素化オプションはすべて使うべきである。また、日本企業は日本近海の深い水深を利用した低コスト浮体式洋上風力発電、燃料アンモニアなど、世界が求める新エネルギー技術の開発・普及で市場と技術競争力を確保すべきである。

【21世紀政策研究所】

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