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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年9月2日 No.3512 都市部から地方への人の流れの創出に向けて -地域経済活性化委員会企画部会

経団連は7月27日、地域経済活性化委員会企画部会(徳川斉正部会長)をオンラインで開催した。鳥取県庁ふるさと人口政策課関係人口推進室の岡本圭司室長、国土交通省国土政策局広域地方政策課の佐藤弘之課長から、都市部から地方への人の流れの創出に向けた施策を聴いた。説明の概要は次のとおり。

■ 鳥取県における都市企業人材の活躍推進の取り組み(岡本氏)

鳥取県では、少子高齢化の進行と若者の県外への流出等により人口減少が深刻化している。とりわけ大きな課題は、地元企業の後継者、専門的なスキルを持つ働き手など、産業振興に欠かせない人材の確保である。そこで、鳥取県と継続的に関わる「関係人口」の拡大に取り組んでいる。長い目でみれば、関係人口の増加は、その後の移住や定住等の動きにもつながると期待している。

関係人口拡大に向けた体制も強化しており、縦割り行政の反省を踏まえ、観光や移住などの部局を一つに統合した関係人口推進室を他県に先駆けて2019年に設置した。

特に、都市部の企業人材を関係人口へとつなげることに注力しており、その一環としてワーケーションを推進している。これは経団連をはじめ、さまざまな関係者との意見交換を踏まえたもので、今期の政策では、(1)ワーケーションと地方での副業・兼業の両方に重点的に取り組むこと(2)副業人材が家族を帯同するファミリーワーケーション――を取り入れている。

今年度の重点政策は「ふるさと来LOVE(クラブ)とっとり」の実施である。これは、企業の人材が鳥取県で、副業・兼業、ファミリーワーケーション、ボランティア等、さまざまなつながりを得られるように、マッチングの支援やプログラムの提供をするものである。今後は、一度得られたつながりを継続できるよう、鳥取県のファンクラブとしてネットワーク化し、鳥取県に関する情報を継続的に提供していく。

副業や兼業をめぐっては、大企業でも解禁の動きが出てきている。鳥取県では、内閣府の「プロフェッショナル人材事業」を活用し、地域の中堅・中小企業と大企業の人材のマッチングを通じて地元企業における都市圏人材の活躍を推進している。具体的には、プロフェッショナル人材の活用を図る戦略拠点と県立ハローワークの無料職業紹介機能を組み合わせた独自の人材誘致プラットフォームを構築し、副業・兼業人材の募集とマッチングを行っている。19年度のスタート時から求人を大幅に上回る応募があり、またアンケートでも副業・兼業人材を受け入れた地元企業の約8割が「期待どおり・期待以上」と回答するなど、全国的にも成功事例として紹介されている。なお、応募者の年齢層については、30代40代50代がそれぞれ3割を占めている。

20年度からは、東京に本社を置く企業と個別に連携して、副業・兼業人材の誘致を進めており、鳥取県で不足しがちなマーケティングやPR等の専門人材が県内企業で活躍している。

一連の取り組みから、働き手は、(1)豊かな自然などの非日常(2)職住近接やテレワーク環境などの利便性が両立し得る場所――を地方に求めていると感じている。こうした地域には、家族で滞在したい、子育てをしたいと思う人にとって魅力がある。働きながら豊かな暮らしを実現できる地域として、鳥取県はさらなる魅力アップに取り組んでいく。

■ 全国二地域居住等促進協議会等の取り組み(佐藤氏)

二地域居住のコンセプトは、05年に国交省が取りまとめた「二地域居住人口研究会報告書」で初めて示され、都市住民がライフスタイルを実現するひとつの手段として、都市の住居に加えて農山漁村等に生活拠点を確立することを想定していた。現在は、「主な生活拠点とは別の特定の地域に、ホテル等を含む生活拠点を設ける暮らし方」と位置付けられており、都市部と地方のどちらを主な居住地とするかは問わない。新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークの普及等を背景に、二地域居住を通じた多様なライフスタイルの実現、地方創生、地方への移住や定住人口の増加等が期待されている。

こうしたなか、21年3月、二地域居住等を推進する機運を一層高めるため、全国二地域居住等促進協議会が設立された。21年7月現在642の都道府県と市区町村が正会員として参加するとともに、関係団体や民間事業者等も協力会員として参画している。同協議会は、二地域居住等の推進にかかわるさまざまな施策や事例等の情報交換・共有・発信、課題の整理や対応策の検討、提言等を行っていく。そのうえで、自治体と企業の連携による取り組みが増えていくことも期待している。

二地域居住の推進にあたっては、費用の軽減、テレワークや兼業・副業勤務などへの対応をはじめ、二地域居住に対応した社会システムや行政制度を柔軟に考えていかなければならない。同協議会は企画・普及部会を設置し、今後の運営を検討する。

【産業政策本部】

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