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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年9月9日 No.3513 西牧在イスタンブール総領事と懇談 -日本トルコ経済委員会

西牧氏

経団連の日本トルコ経済委員会(柵山正樹委員長、斎藤保委員長)は8月5日、西牧久雄在イスタンブール日本国総領事館総領事との懇談会を開催し、トルコの社会・経済事情等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ トルコの潜在力

トルコは過去20年間で経済が大きく発展した。GDPは約3.0倍、1人当たりでも約2.3倍と着実に増加した。平均寿命も医療水準の向上等により77.7歳と8.3歳伸びている。失業率は7.7%から13.7%に上昇したが、この要因の一つは、約400万人のシリア難民の受け入れである。単純労働の分野でシリア人がトルコ人と入れ替わっている。しかし、トルコでは家族の結びつきが強く失業のインパクトが家族内で緩和されるため、社会的な影響は数字より小さい。

人口動態調査によれば2100年まで人口増加が続き、約1億1000万人に達すると予想されている。

トルコの国土は日本の2倍程度あり、高速道路を建設する余地が十分にある。大都市間の高速鉄道整備の計画もある。国民のほぼ全員が携帯電話を所有している。軍用ドローンでは世界有数の先進国であり、トルコ国内の遺跡や文化財の監視業務への利用が期待される。

トルコ政府の新型コロナウイルス対応は優れている。陽性者を自宅で待機させアビガン(ファビピラビル)と解熱剤を投与、それでも病状が治まらない場合には入院というシステムが有効に機能している。新型コロナによる死亡率も日本の約2%に対し、トルコは0.9%である。

さらに、コロナ禍において、トルコはGDPの約13%に匹敵する財政支援や減税、観光産業への支援を実施した。結果、20年はG20諸国のなかで中国とトルコのみがプラス成長となり、21年のIMF経済成長予測も5%に上方修正されている。

■ トルコの外交

外交面について、近年のエルドアン政権は強権的とみられがちだが、概ね11年までは欧米諸国とも友好的な関係を築いていた。アラブの春以降のアサド政権との対立やシリア難民の流入、イスラム国(IS)のテロ活動等、周辺環境の変化によって、エルドアン政権が強権的な姿勢を取らざるを得なくなったと考えている。このような側面も考慮すべきである。

■ 日本トルコ関係

トルコは、日本との貿易は赤字であるものの、日本から部品を輸入し欧州に完成品を輸出することで、最終的に年間20億~30億ドルの収入を得ている。さらに日系企業が雇用を確保するとともに、技術移転による利益も上げている。この事実については当地着任後、トルコの要人の多くに説明し、理解を得ている。なお、トルコは中国との貿易も赤字だが、中国からの輸入は携帯電話、電気製品等の最終消費財が多く、日本との貿易赤字とは性質が異なる。

日本の報道のみをみると、トルコにマイナスのイメージを与えるものもあるが、それは現実とは異なる。報道をそのまま受け取るのではなく、事実や客観的データに基づいて判断、評価をしてほしい。

【国際経済本部】

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