経団連のサブサハラ地域委員会企画部会(河村肇部会長)は8月23日、アフリカ開発に関する懇談会をオンラインで開催し、立命館大学の白戸圭一教授から、今後のアフリカ開発のあり方について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ アフリカの人口動態と新型コロナの状況
2050年にかけて、世界の多くの国で人口減少が進むなか、アフリカでは人口が急増する国が多い。アフリカ各国の人口ピラミッドは富士山型であり、将来もこの構成が続くと予想される。新型コロナウイルスの発生当初、アフリカは経済的に貧しく、医療水準も脆弱なため、影響は大きいと予想する向きもあった。しかし、世界の他の地域と比べて、アフリカにおける発症率、死亡率は低位で推移している。アフリカは若年層が多く、重症化しやすい高齢者が少ないことが主な要因と考えられる。
■ ワクチン接種の現状と展望
21年現在、世界人口に占めるアフリカの割合は17.6%であるのに対し、ワクチン接種率は1.7%にとどまっている。アフリカの民間調査会社によれば、アフリカのほとんどの国において、中国が主なワクチン供給元となっている。ワクチン接種完了時期は23年末と、先進国と比べて2年程度の遅れが生じるだろう。変異株への対応も求められるなか、迅速かつ円滑な事業活動が可能かどうか、注視していく必要がある。
■ 今後の経済発展の可能性と課題
今後のサブサハラ地域のGDP成長率(予測値)について、今年は4%程度のプラスとなるものの、00年代初頭の高成長には戻らず、低成長のアフリカと向き合うことになる。また、アフリカへの投資も減少していくだろう。
ただ、これをもってアフリカのビジネスチャンスを悲観的に考えるべきではない。携帯電話の急速な普及における「リープフロッグ(かえる跳び)現象」、スタートアップ企業による家庭用太陽光発電システムの割賦販売などの動きがみられる。また、ケニアのインターネットバンキングへのアクセス比率は、1人当たりGDPで世界最高水準を誇るルクセンブルクやスイスと同程度にあるなど、日本よりもITリテラシーが進んでいる面もある。
アフリカの政情を安定化させるためには、増え続ける人口を賄うための食料生産に長期的に取り組む必要がある。サヘル地域など、食料を輸入に依存し、食料価格の高騰を招き、政情が不安定化する例も散見される。アフリカの農業従事者は51%を占めるのに対し、農業のGDP比率は16.2%にすぎず、世界の他地域と比べて農業の生産性は大きく見劣りする。単位面積当たりの穀物収穫量についても、先進国と10倍近い差があり、改善に向けて民間からの投資や協力が求められている。
【国際協力本部】