経団連は8月31日、デジタルエコノミー推進委員会企画部会(浦川伸一部会長)をオンラインで開催し、前内閣官房行政改革推進本部事務局企画官の木村恵太郎農林水産省大臣官房統計部統計企画管理官から、行政におけるデータ利活用の推進について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ EBPM推進に向けたデータ利活用の環境整備
EBPM(Evidence Based Policy Making)とは、政策目的と手段の論理的なつながりとなるエビデンスに基づいて政策を立案する取り組みであり、その基盤はデータにある。EBPMを政策の質の向上に結び付けていくためには、政府がさまざまなデータを取得・整備し、それぞれのデータの特徴を踏まえて利活用を図る必要がある。そこで、官民データ活用推進戦略会議官民データ活用推進基本計画実行委員会のEBPM推進委員会データ利活用ワーキンググループでは、データ利活用の環境整備にかかわる課題を整理し、課題解決に向けた考え方を取りまとめた。
■ 課題(1) データガバナンスの確保
企業が政府へのデータ提供を検討する際、政府内でデータが適切に管理される確証が得られず、データを提供すべきか判断できないことがある、との声がある。各省庁においては、企業から信頼されるよう、適切なデータガバナンスを確保しなければならない。まずは、どのようなデータが各省庁のどの局・課にあるのかといった、データの所在を把握する必要がある。また、政策立案や執行にあたり、データの適切な収集や重要度に応じた管理など、データマネジメントに向けた体制を整備する必要がある。
■ 課題(2) データ人材の確保・育成
政府内でデータを使いこなせる人材が不足していると、データの利活用が進まないため、人材を育成・強化する必要がある。政府では、データ利活用の基礎力を底上げするための一般行政官向けに加え、データサイエンティスト育成向けの研修プログラムをそれぞれ進める予定である。
■ 課題(3) 民間データの適正な利活用
政府における新型コロナウイルスの感染対策が民間企業の人流データを用いて立案されたように、民間企業から政府にデータを提供してもらい、政策立案のために活用していくことが理想である。
データを政府に安心して提供してもらうための課題について、ビッグデータを保有する企業9社を対象にヒアリングを行った。それによれば、提供したデータの利活用のされ方やもたらされる便益について政府が国民に説明し、理解してもらうことが重要であるという意見が多かった。
企業には、データ提供に伴うリスクを株主に説明する義務がある。このため、利用目的や利用する主体、利用される範囲などを政府と企業の間で明確に決めておくことが重要である。
■ 農水省のデータ利活用事例
新たな政策ニーズを踏まえ、統計調査のような従来の調査手法と異なるデータ収集・分析手法の調査研究とともに、職員がデータセンスを身につけるためのデータサイエンティスト育成研修を実施している。また、人工衛星からのデータの解析に基づく水稲の作柄予測手法の導入や作付け作物の判別手法の開発により、現地での実測調査を合理化することも検討中である。
【産業技術本部】