経団連と東北経済連合会(東経連、海輪誠会長)は10月7日、新型コロナウイルスをめぐる状況を踏まえ現地開催を見送った東北地方経済懇談会に代わり、「東経連・経団連首脳によるオンライン懇談会」を開催した。経団連からは十倉雅和会長をはじめ古賀信行審議員会議長、副会長らが、東経連からは海輪会長をはじめ副会長らが出席するとともに、東経連会員等約130名がオンラインで参加した。
冒頭、十倉会長は、「新型コロナの影響により、オンライン形式での開催となったことは残念だが、緊急事態宣言の解除やワクチン接種の進展により、社会経済活動の再開に向けた道筋は着実に見え始めている」と述べ、ウィズ・ポストコロナにおける地方の成長と活性化につながる議論に期待を示した。
続いて、海輪会長が、東日本大震災からの復興、ポストコロナを見据えた提言の取りまとめ、次世代放射光施設の建設、カーボンニュートラル等、直近の東経連の取り組みを説明。とりわけ、東日本大震災から10年の節目となる今年、復興支援への感謝を伝えることを主眼に都内で開催した「東北ハウス」について報告するとともに、現在も続けている「バーチャル来場体験」(※)を紹介した。
これを受けて、古賀審議員会議長は、「10年間、経団連の社会貢献推進委員長、地域経済活性化委員長、震災復興特別委員長等として震災復興に取り組んできた。あらためて、東北復興応援フェスタ・マルシェ等の開催、現地視察の実施を通じて、風化防止に努め、現状と課題を見続けたい」と決意を述べるとともに、「復興は息の長い取り組み」として、引き続き協力していく姿勢を示した。
懇談では、以下の2テーマについて東経連・経団連双方が意見を交わした。
■ 地域における魅力づくりの推進
まず、地域における魅力づくりに関して、東経連側が「関係人口拡大の観点から、首都圏に拠点を置きながら地方で副業・兼業をする人材の活用が重要。柔軟で多様な働き方の実践の場として東北・新潟が選ばれるよう努力していきたい」と発言。
これを受け、経団連側からは、
- 「人を惹きつける地域づくりに向けた価値協創を進めていくため、『地域協創アクションプログラム』の策定を通じた内発型の地域づくりを図るとともに、会員企業・団体の取り組みを収録した『地域協創事例』の作成と発信に努める」(隅修三副会長)
- 「ポストコロナの東北・新潟の活性化に向けて、当社では、デジタル技術を活用した観光のプラットフォームづくりに全力を挙げるとともに、新幹線による産地からの直送や販売ルートの拡大等を実施していきたい」(冨田哲郎副会長)
- 「人の流出を防ぐ取り組みも重要であり、当社は広島大学と東広島市と協力して次世代の都市の実現に向けたプロジェクトを展開している」(中村邦晴副会長)
- 「浜通り地域の復興に向けた取り組みの一つである福島イノベーション・コースト構想に、メーカーとして参画していきたい」(大橋徹二副会長)
――などの意見が出された。
■ 産業競争力の強化
次のテーマである産業競争力の強化については、東経連側が「地域産業の自立と成長に向け、次世代放射光施設の活用等を通じ、新産業の創出、産業集積等を図っていく。また、政府のグリーン成長戦略の実行ある展開に向けて経団連と検討を深めたい」と発言。
これを受け、経団連側からは、
- 「ポストコロナにおける持続的な成長のカギはデジタルトランスフォーメーション(DX)である。地方の大学、中小企業、スタートアップ等がDXによる価値協創エコシステムを構築することが重要」(東原敏昭副会長)
- 「地域振興には産業を興すことが重要であり、遠隔操作ロボットであるアバターを観光、教育等さまざまな分野に活用していきたい」(片野坂真哉副会長)
- 「カーボンニュートラルの実現には、イノベーションの創出と新技術の社会実装が不可欠であり、こうした取り組みに地元企業や自治体にも参加してもらうことで、東北の活性化に協力したい」(杉森務副会長)
- 「産学協議会で地方大学を核とした産学官金連携等について議論しており、地域のイノベーションの創出、人材育成につなげていきたい」(渡邉光一郎副会長)
- 「原子力はS+3E(安全性+安定供給、経済効率性、環境適合性)のバランスに優れる脱炭素電源であり、安全性を大前提にベースロード電源として活用することが不可欠」(安永竜夫副会長)
――などの意見が出された。
最後に、十倉会長は、「地方創生は経団連の最重要課題の一つであり、東経連とも密に連携して取り組むことで、わが国全体の活力につなげていきたい。来年こそは、ぜひ対面で東北地方経済懇談会を開催できることを心より願っている」と締めくくった。
https://www.tohokuhouse.jp/virtual.html
【総務本部】