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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年11月18日 No.3522 垣添日本対がん協会会長が常任幹事会で講演

垣添氏

十倉会長

経団連は11月2日、東京・大手町の経団連会館で常任幹事会を開催した。日本対がん協会の垣添忠生会長が「人はがんとどう向き合うか?」と題して講演した。概要は次のとおり。

■ がんとはどういう病気か

がんは、遺伝子の異常により発生し、進展する細胞の病気である。その発生には、喫煙、食事、感染症などの生活習慣・環境が関連する。がんには、甲状腺がんや前立腺がんの一部のように非常にゆっくり進行するものや、すい臓がんなどのように増殖速度が極めて速いものもあるが、がんの7~8割は、時間の経過とともに徐々に悪化していく。

がんは、人の体内でいつからかもわからないうちに発生、進展し、初期のころは無症状である。調査により、国立がん研究センター中央病院のがん死亡患者の7割は、発見時にはステージⅢ、Ⅳ期の進行がんとなっており、その大部分は一度も検診を受けていなかったことがわかっている。がんで亡くならないためには、がん検診の受診率について、当面、国が目標としている50%を達成するとともに、精度管理の行き届いた検診を行うことが重要となる。

■ 新型コロナの影響

がんは、今や一生のうち2人に1人がかかる病気である。年間100万人を超える人ががんになり、死亡者は約38万人に上るなど、日本人の健康に及ぼす影響は極めて大きい。日本対がん協会では、毎年、約1100万人のがん検診を実施し、約1.3万人のがんを発見してきたが、新型コロナウイルスが流行し始めた昨年の3月ごろから、がん検診の受診者が激減し、2020年は前年比3割減であった。特に早期のステージのがんを中心に、多くのがんが発見されないまま放置されている状況にある。

また、がん患者のなかでも、特に抗がん剤治療、放射線治療中の人、手術直後の人は、免疫力が著しく低下しており、新型コロナ感染や重症化のリスクに対する不安が高まっている。

こうしたことを踏まえ、コロナ禍にあっても、がん検診の重要性に、いま一度思いを致してほしい。あわせて、働き手の確保の面で企業のがん対策も重要性が増している。働く世代(65歳まで)の6~7人に1人ががんになるというなか、今後、雇用延長や女性社員の増加が進めば、従業員のがん罹患者数が増加することはほぼ確実である。正しい知識があれば、がんのかなりの部分は予防できること、また、がんとの共生は可能であり、治療と就労の両立も可能であることをあらためて認識してほしい。

■ 対がん活動への想い

私は、がんの臨床を40年、基礎研究を15年にわたり行い、自身もがんを経験した。がん患者の家族であったし、遺族でもある。また、25年近く国や都のがん対策に積極的に関与してきた。がんのあらゆる局面に当事者として関わってきた経験を今後のがん対策に活かすべく、日本対がん協会の会長として、皆さまからの寄付により、がん予防・がん検診の推進、がん患者ならびにその家族の支援、正しい知識の普及啓発に取り組んできた。がんは誰でもかかる病気の1つであり、医療の問題であることはもちろん、経済の問題でもあり、社会の問題でもある。がんで苦しむ人、悲しむ人を無くし、がん経験者を特別視しない社会の実現を目指し、今後も活動を続けていきたい。

【総務本部】

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