1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2021年11月25日 No.3523
  5. わが国大学の国際化に向けた課題

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年11月25日 No.3523 わが国大学の国際化に向けた課題 -教育・大学改革推進委員会企画部会

経団連は10月29日、教育・大学改革推進委員会企画部会(平松浩樹部会長)をオンラインで開催した。グローバル化に対応した大学教育と国際的な大学間連携・交流をテーマに、名古屋大学副総長・国際機構長の川北一人教授と、高等教育機関の国際コンソーシアム組織「国際大学協会」理事の勝悦子明治大学政治経済学部教授から、それぞれ説明を聴き懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ 名古屋大学の国際戦略と海外大学との教育連携に向けた課題(川北氏)

大学の国際化は、(1)多様な価値観を尊重する意識を醸成する(2)世界的な課題や日本・地域の課題を俯瞰して考察する――うえで重要である。

名古屋大学は、2014年から、「成長するアジアと学ぶハブ大学」を標榜し、その実現に向けた戦略を展開している。まず、世界水準の最先端研究拠点となるべく、若手・女性・外国人研究者の研究を支援している。また、大学院の6専攻において、連携する海外トップ大学との間で教育プログラムを共同で開設し、修了者に共同で学位を授与する「ジョイント・ディグリー・プログラム」を実施している。さらに、留学生の受け入れ・派遣を推進するため、英語による授業のみで卒業可能な秋入学コース「G30プログラム」を設置するとともに、協定校との交換留学プログラム、留学生へのキャリアサポート等に取り組んでいる。

その結果、留学生受け入れ数は目標をほぼ達成した。一方で、海外への派遣数は伸び悩んでいるため、学部生全員が卒業までに一度は留学することを目標に掲げ、全学交換留学プログラムの展開や留学積立金制度の導入等を進めている。このほか、アジアへのサテライトキャンパスの設置拡大やアジア諸国との教育研究ネットワーク化を図っている。

コロナ禍を契機に、世界の有力大学は留学生確保のため遠隔教育に注力している。われわれも、日本と海外の両キャンパスにおいて、対面・オンラインを効果的に組み合わせたテーラーメード型の教育・留学プログラムを実施していく。

■ 大学間連携をめぐる国際的な動向(勝氏)

教育再生実行会議は、13年に公表した第三次提言で、日本人留学生を12万人、海外からの留学生を30万人まで増やすことを目標に掲げ、グローバル化に対応した教育環境を整備するよう提言した。これを受けて、政府はスーパーグローバル大学の選定など大学の国際化を推し進め、日本の大学は海外の大学との大学間協定の締結を拡大した。新興国の大学との協定締結にあたっては、先方の教育の質が課題となっている。特にジョイント・ディグリー・プログラムでは、双方の大学における質の保証や単位付与基準の同等性が絶対条件となるため、近年では単位互換における質の保証や基準の国際化が進んだ。

こうした取り組みの結果、外国人留学生数は急速に伸びて、19年度には目標の30万人を達成し、日本人留学生数も19年度に10万人を超えた。ただし、日本人留学生のほとんどが留学期間1年未満の短期留学である点は、いまだ課題として残っている。

なお、研究面に関しては、注目度の高い論文数において、日本の世界ランクが低下しており、深刻な問題となっている。海外の大学との共同研究を推進し、国際共著論文もさらに増やしていく必要がある。

【SDGs本部】

「2021年11月25日 No.3523」一覧はこちら