Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年1月20日 No.3529  提言「新しい時代に対応した大学教育改革の推進」を公表

経団連は1月18日、提言「新しい時代に対応した大学教育改革の推進」を公表した。

コロナ禍を契機にデジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)が加速するなど経済・社会が大きく変化するなか、社会の中核で活躍する人材を輩出する大学は、Society 5.0に対応した教育改革を急ぐ必要がある。そこで今般、大学の役割のうち教育面に焦点を当てるとともに、会員企業等に実施した「採用と大学改革への期待に関するアンケート」の結果も盛り込みつつ、提言を取りまとめた。提言の概要は次のとおり。

1.経済界が求める人材像と採用動向

新卒者・既卒者の採用方法の動向

「採用と大学改革への期待に関するアンケート結果」では、大卒者に特に期待する資質として、企業の約8割が「主体性」「チームワーク・リーダーシップ・協調性」を挙げ、「学び続ける力」を選択した企業も4割近くあった。

また、特に期待する能力として、「課題設定・解決能力」(80.1%)「論理的思考力」(72.1%)「創造力」(42.6%)が上位となった。

今後5年程度先を見通した採用の傾向として、(1)既卒者の採用を増やすこと(2)多様な人材を確保するため、新卒一括採用に加え、新卒者・既卒者を問わず、通年採用、職種別・コース別採用、ジョブ型採用など採用の多様化・複線化を進めていくこと――がみられた(図表参照)。

2.経済界が期待する大学教育改革

大学は、内外の環境変化に対する感応度を高め、教育内容を不断に見直すべきである。変化の激しい人生100年時代にあって、大学には、若者の教育のみならず社会人の学び直しの場としての役割も期待される。「仕事と学びの好循環」の実現を目指し、産学官連携によるリカレント教育プログラムを拡充すべきである。

具体的には、「3つのポリシー」(注)に基づく入学から卒業までの一貫した「教学マネジメント」を確立し、卒業要件の厳格化など「出口における質保証」を強化するとともに、学修成果を可視化・公表すべきである。また、オンラインと対面を効果的に組み合わせたハイブリッド型教育、経済界や国・地方公共団体など多様な主体との連携による人材育成に取り組む必要がある。さらに、今後の教育内容として、(1)文理融合教育(2)数理・データサイエンス・AI教育(3)PBL(Project Based Learning)等の課題解決型教育(4)グローバル化に対応した教育(5)キャリア教育(6)起業家教育(7)リカレント教育――の7分野を重視すべきである。

3.規制・制度改革

大学設置基準は、新たな時代に対応できるよう抜本的に見直す必要がある。まず、全国で800を超えるすべての大学に一律の基準を適用することを改め、認証評価機関から長年高い評価を受けるなど一定の大学に対しては、大学設置基準の適用や認証評価を一部緩和すべきである。各論として、定員管理のあり方の見直し(学部単位から大学単位へ等)や、オンライン授業による修得単位数の上限(60単位)の撤廃、校地・校舎等施設にかかわる基準の見直し等が必要である。

また、大学が機動的・戦略的に意思決定し得る「経営体」へと進化するには、(1)適切なガバナンスの実現(多様な背景を持つ学外者のガバナンス体制への参画、監事と理事・評議員の兼任禁止等)(2)外部資金の積極的な獲得拡大(大学版「統合レポート」の作成・公表等による情報公開の拡大等)――が必要である。今後、政府・大学・経済界等による会議体を設置し、大学における情報公開のあり方を検討すべきである。

(注)ディプロマ・ポリシー(卒業認定・学位授与の方針)、カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)、アドミッション・ポリシー(入学者受け入れの方針)

【SDGs本部】