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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年1月27日 No.3530 解説「2021年版 経済・産業の動向と当面の政策課題に関する報告書」〈下〉

経団連は12月14日、「2021年版 経済・産業の動向と当面の政策課題に関する報告書」を公表した。最終回は、今後、特に重要と考えられる政策課題について解説する。

■ 経済社会活動の活性化に向けた感染症対応

足元で新型コロナウイルスのオミクロン株による感染が急拡大しており、エッセンシャル業務の停滞が懸念される。こうした状況下では、事業継続計画(BCP)の観点から、リモートワークの有効活用をはじめ、企業としての対応も求められる。ただし、過去の感染拡大期と異なり、重症化を予防するワクチン接種が進んだほか、経口治療薬も開発・承認されている。科学的な見地に基づいた対策を講じることが重要である。

具体的な取り組みとしては、ブースター接種の加速、さらなる治療薬の開発、早期治療を可能とする医療提供体制の整備等が挙げられる。

国際的な人の移動の正常化については、国内でのオミクロン株への置き換わりが確認できた時点で、水際措置のあり方をあらためて検討する必要がある。

■ 雇用および事業継続・業態転換支援

コロナ禍の長期化によって業績の著しい悪化が続いている事業者を中心に、雇用維持や事業継続のための支援を引き続き行う必要がある。他方、テレワークやオンライン会議の普及等、新型コロナを機に不可逆的な大きな構造変化が生じているため、新たな経済社会構造も念頭に置いた対応が求められる。

雇用維持については、これまで雇用調整助成金の特例措置や産業雇用安定助成金等により、失業率の急激な上昇が抑制されてきた。今後は、失業の抑制にとどまらず、リスキリング等の育成支援や、人材の流動化を促すことで、生産性向上を目指すべきである。

資金繰り支援をはじめ、各種の事業継続のための支援策により、倒産はこれまで一定程度抑制されてきた。他方、新たな経済社会構造への変化によって、従来のビジネスモデルからの転換を迫られる事業者も存在する。こうした事業者に対しては、業態転換の推進等を図るほか、事業者のニーズに応えつつ、M&Aの推進等により新陳代謝を促すことで、生産性向上につなげていく必要がある。

■ DX・GX等を通じた成長戦略の実現に向けた支援策

成長と社会課題の解決を同時に目指す「サステイナブルな資本主義」の実現のためには、デジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)の促進が不可欠である。

特にGXは、わが国の掲げる「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を経済成長につなげていくうえで避けて通れない課題であることから、国家戦略と位置付け、政策リソースを大胆に動員すべきである。その際、50年に向けたロードマップを描いたうえで戦略的・計画的に取り組むことが重要である。

DXやGXをはじめ、さまざまな分野における革新的イノベーションの創出とその社会実装に向けて、十分な規模とスピード感を持って、施策を展開していく必要がある。その際、単年度主義にとらわれない複数年度による予算措置のほか、研究開発税制の強化、投資減税措置の拡充・創設、一層の規制・制度改革の推進も必要となる。

【経済政策本部】


解説「2021年版 経済・産業の動向と当面の政策課題に関する報告書」
〈上〉マクロ経済の現状と見通し
〈中〉コロナ禍による影響が大きい産業の現状と見通し
〈下〉主要な政策課題

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