1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2022年2月3日 No.3531
  5. 和歌山県における観光振興のあり方

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月3日 No.3531 和歌山県における観光振興のあり方 -観光委員会

仁坂氏

経団連は12月23日、観光委員会(菰田正信委員長、新浪剛史委員長、武内紀子委員長)をオンラインで開催した。和歌山県の仁坂吉伸知事が「コロナ禍を踏まえた観光の現在と未来」と題して講演した。概要は次のとおり。

仁坂氏は冒頭、新型コロナウイルス対策をめぐり、欧州に比べて日本の死者数が少ない理由として、感染症法に基づいた保健所による行動履歴調査・早期発見・検査・隔離が功を奏したと指摘した。そのうえで、感染防止と経済・生活の再生の両立を目指す「和歌山モデル」を紹介。特に、保健医療行政について保健所ネットワークの統合とデータに基づいた対策を実施し、県全体の病床過不足をコントロールすることで、第5波においても全員入院を実現できたと強調した。同県では、経済・生活の制限は必要最低限にとどめたが、観光を原因とする感染は全体の3%しかなく、「根拠なく観光を諸悪の根源とするのはおかしい」と指摘した。

観光については、新型コロナの感染状況をコントロールできれば需要の回復が見込まれることから、観光の本質をとらえながら進化を遂げていくことで、新型コロナ前への回復を目指すと表明。そのためのキーワードとして、(1)非日常性(2)新奇性(3)価値の多様化と個人旅行(4)観光対象の拡大と体験の重要性(5)アクセスの利便性(6)文明生活からの非乖離(7)快さの演出(8)情報の重要性――を挙げた。特に都会からの観光客を取り込むには、大自然など同県でしか味わえない新奇性を磨くことが重要と述べた。

加えて、同県では、景観条例の制定等により、熊野古道などの資源の魅力維持に努めるとともに、空港や高速道路の整備によるアクセス面の改善や、総延長800キロメートルに及ぶサイクリングロード「WAKAYAMA8∞」の整備などを進めてきたと説明。助成金を支給しながら、県内のトイレを温水洗浄便座付きトイレに取り換えるなど、「おもてなしの心」での取り組みについても紹介した。

また同県が全国に先駆けてワーケーションの普及に取り組んでいることを踏まえ、仁坂氏は、ワーケーション自治体協議会の会長の立場から「ワーケーションは、生産性を上げる真の働き方改革である」と語った。

同県の観光は、宿泊客数が1973年にピークとなったのち長年停滞していたが、近年の観光振興策により世界中の評価が高まり、2019年には観光入込客数が史上最高を更新するなど、盛り上がりをみせてきたと指摘。一方で、観光に携わる従業員の所得の低さ、高齢化の加速など課題も残っており、より速度を上げて課題解決に取り組むと述べた。

【産業政策本部】

「2022年2月3日 No.3531」一覧はこちら