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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月24日 No.3534 常任幹事会で川島東京大学大学院教授が講演

川島氏

経団連は2月2日、東京・大手町の経団連会館で常任幹事会を開催した。川島真東京大学大学院総合文化研究科教授・21世紀政策研究所研究主幹が「2022年の中国」と題して講演した。概要は次のとおり。

■ 習近平政権の統治政策および経済・対外政策の特色

中国では今年、北京冬季オリンピック・パラリンピックをはじめとするさまざまなイベントが控えている。どのイベントであれ、中国政府の対応は、今秋に開催される第20回共産党大会における今後の指導体制人事に関連すると考えている。この党大会で、68歳定年制が事実上撤廃され、習近平国家主席が中央政治局常務委員会総書記として、任期3期目に突入し、引き続き最高指導者となることが確実とみている。ただ、党主席になるか否かは判然としない。

中国は、「建党100年」となる21年と、「建国100年」となる49年という「二つの100年」に向けて目標を掲げて政策を展開してきた。21年には、中国全土において貧困から脱却し、「小康社会」(ややゆとりのある社会)を全面的に実現したとしている。49年には、「社会主義現代化強国」(中国的特色のある社会主義強国)を完成し、経済力だけでなく軍事力においても米国を超え、台湾問題についても解決するとしている。

中国は、党が国家を指導する「党国体制」であるが、習近平氏は、これまで党による指導を一層強化し、権力を自らに集中させてきた。それは制度的、法的に進められたが、中国の技術力の急速な発展を背景に、デジタル技術を用いて社会の管理体制を強化したのが実態であることを踏まえるのが重要である。政権批判を統制すると同時に、ビッグデータを通じて社会の動向を把握してさまざまな政策を打ち出している。こうした技術革新の担い手は主に民間企業だが、政権は一面で5Gなどの新インフラ建設を進め、新たな経済的飛躍への環境を整備してきている。一方、そこで生まれるさらなる格差を「共同富裕」の名のもとに調整するとともに、多くの情報を持つプラットフォーマーに対する管理も強化している。

また、「中華民族」を総体として均質化すべく、民族自治区や特別行政区に与えていた「特権」を減らしている。例えば、香港では、民主派を排除した立法会において、安全や教育に関する法案が成立予定であり、党への忠誠心や愛国心を育てる教育を行うことで、愛国者による香港統治を実現しようとしている。

■ 対外関係および台湾問題

中国は、外交面では、軍事だけでなく、経済や資源、文化など多岐にわたる分野で「国家の安全」を優先させる政策を進めている。特に、国際秩序のなかで、米国の価値や米国中心の安保システムを批判する一方、国連を重視しつつ、中国による経済中心の新たな国際秩序(新型国際関係)の形成を目指している。すでにアフリカやアジア諸国へ多額の投資を行っており、これらの地域において、中国の影響力は無視できないものになっている。また、台湾については、愛国者の養成をはかり、最終的には戦わずして統一することを目指している。ただし、長期的な時間軸でも、平和裏に統一することが難しいと党が判断した場合には、将来的に、武力侵攻に踏み切る可能性も否定はできない。

他方、米中関係は極めて厳しい状態にあるが、両者は経済的に相互に依存している。米国は、気候変動などの問題についても中国と協力する方針を打ち出している。日中関係をみると、今年、日中は国交正常化50周年を迎えるが、日本としても米中間でバランスを取りながら、中国に是々非々で対応し、協力すべきは協力して、対中政策を調整していく必要がある。

【総務本部】

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