Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年2月24日 No.3534  ハイレベルシンポジウム「サステイナブルな資本主義の実現に向けて」を開催〈下〉

経団連は1月28日、「サステイナブルな資本主義の実現に向けて~社会課題を解決するイノベーションとESG投資の進化」をテーマに、ハイレベルシンポジウムをオンラインで開催した。基調講演(前号既報)に続き、後半では、イノベーションを生むガバナンスや企業の挑戦を後押しするESG投資(環境・社会・ガバナンスを踏まえた投資)のあり方について、企業経営者によるパネルディスカッションを行った。パネリストとして、好本達也 J. フロント リテイリング社長、鈴木純 帝人社長、大越昇一 JPモルガン・アセット・マネジメント社長、渡辺一 日本政策投資銀行社長が登壇し、モデレーターは堀天子 森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士が務めた。各パネリストの発言要旨は次のとおり。

好本氏

鈴木氏

大越氏

渡辺氏

堀氏

■ 好本氏

当社は、前身の大丸、松坂屋が創業した当時から、顧客第一主義や社会貢献を重視するサステナビリティ経営をしてきた。最近では、循環型社会の構築に貢献すべく、顧客の不要になった衣類のリサイクル、衣類のサブスクリプション事業等も展開している。こうした従来の百貨店では考えられなかった新しい取り組みにより、企業の成長と社会課題の解決の両立を目指している。

コロナ禍は当社の経営に厳しい影響をもたらす一方で、同時に大きなチャンスでもある。挑戦に向けて背中を押してくれるのは、企業価値向上という同じ目的を持つステークホルダーとの対話である。

■ 鈴木氏

当社は、社会課題のメガトレンドと重なる「環境価値」「安心・安全・防災」「少子高齢化・健康志向」の3つの分野を注力すべき事業領域と位置付け、未来の社会で必要とされるモノやサービスを生み出すことを目指している。それにはビジネスにつながるイノベーションを創出することが重要となる。その手段として、ダイバーシティ&インクルージョンが必須と考えている。

コーポレートガバナンス・コードの原則についてコンプライ(順守)ではなく、自社の考え方のエクスプレイン(説明)をする場合、時間をかけて投資家と直接対話する機会が得られなければ、形式的に否定されてしまうだろう。この点が、投資家との対話で感じる課題である。

■ 大越氏

企業の持続的な成長と投資家へのリターンの創出という好循環社会の実現に向け、社会的な使命として責任ある投資に努めている。ESGと企業収益は「トレードオフ」ではなく「トレードオン」であると、発想を転換する必要がある。企業には形式にとらわれず、非財務情報を積極的にアピールすることを期待する。

企業にはダイバーシティも必要であるが、インクルージョンが伴ってこそ効果を生むことを理解すべきである。

■ 渡辺氏

当行の目的は、経済社会の発展およびリスクマネーの提供であり、これはサステナビリティそのものである。当行は、コロナ禍での危機対応融資に加え、非財務情報をもとに優れた企業の選定による「評価認証型融資」を実施している。この融資の対象となることで、企業が他のステークホルダーからも評価されることを期待している。

多様な人が活躍する柔軟な組織こそがイノベーションを生み出すと感じる。具体的には、若い人材がわくわくでき、自由な風土であることだ。同時に、トップが掲げる共通の価値観・目標が社内に浸透していることも重要である。

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質疑応答では、短期的な経営基盤の安定と同時に長期的視点に立った大胆な取り組みをいかに進めるか等について質問がなされ、活発な議論が行われた。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】