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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年3月10日 No.3536 IFRS財団におけるVRFの役割 -サステナビリティ基準のグローバルなベースラインの構築/金融・資本市場委員会ESG情報開示国際戦略タスクフォース

経団連金融・資本市場委員会ESG情報開示国際戦略タスクフォースは2月9日、価値報告財団(Value Reporting Foundation、VRF)との懇談会をオンラインで開催した。経団連金融・資本市場委員会のESG情報開示国際戦略タスクフォース、建設的対話促進ワーキング・グループから、80名余りが参加した。

VRFは、非財務報告基準を開発してきた主要な2団体である「米国サステナビリティ会計基準審議会」(SASB)と「国際統合報告評議会」(IIRC)との統合によって昨年6月に設立。昨年11月の国際会計基準(IFRS)財団における「国際サステナビリティ基準審議会」(ISSB)の設立時に、ISSBと統合することが発表された。

ジャニーン・ギリアトCEOによるあいさつの後、ケイティ・シュミッツ・ユーリット投資家担当ディレクター、ブライアン・エスタリー チーフ・テクニカル・オフィサーから、ISSBやVRFの活動について説明を聴くとともに意見交換した。VRFの説明の概要は次のとおり。

■ 来賓あいさつ(ギリアト氏)

ISSBでは、サステナビリティ基準の統合・簡素化を行い、IFRSと同様に市場のインフラとして受け入れられる基準をつくりたい。日本からも、ISSB・IFRS財団の関連組織への参加や公開草案を通じて、意見を聴きたい。

■ ISSBの役割(ユーリット氏)

IFRS財団は昨年11月、ISSBの設立とともに、気候変動開示基準委員会(CDSB)およびVRFとの統合を発表した。この統合は、サステナビリティ報告基準の統一化・簡素化に対する資本市場関係者の要請に応えたものである。

ISSBの役割は、サステナビリティ基準のグローバルなベースラインを策定することにある。ISSB基準をベースに、地域固有の事項を積み上げて、各国の基準をつくる。IFRSを開発するIASB(国際会計基準審議会)と連携して、サステナビリティ報告と財務報告との開示の結合性を確保したい。

■ IFRS財団のTRWGの活動(エスタリー氏)

TRWG(Technical Readiness Working Group)は、ISSBへの技術的な提言を行う組織である。8つの検討課題があり、「サステナビリティ関連の財務情報に関する全般的な開示要求」と「気候関連の開示要求」は、プロトタイプを公表済みだ。TRWGの公表物は「提言」との位置付けなので、基準化にはISSBによるデュー・プロセスが必要である。

TRWGが提案するISSBの基準の全体像では、「全般的な開示要求」のもとに、すべての企業に影響のある「テーマ別の開示要求」を置く。また、業種固有の状況をとらえるための「業種別の開示要求」も策定する。すべての開示要求は、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの柱に基づいて整理する。

■ ISSBとVRFとの統合(ユーリット氏)

VRFは、IIRCとSASBの合併によって設立された。IIRCは、企業の意思決定を支援する統合報告フレームワークと統合的思考原則を保有している。これらは、財務報告と非財務報告をつなぎ、企業の持続的な価値創造に関する理解を深める役割を果たすだろう。SASBの業種別基準はISSBの「業種別の開示要求」の起点となるだろう。

今起きているのは、企業報告における一世一代の大変革である。21世紀の資本市場にふさわしい、包括的な企業報告システムの構築に向けて取り組みを進めたい。

【経済基盤本部】

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