Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年3月31日 No.3539  企業情報開示を取り巻く昨今の状況 -金融・資本市場委員会企業会計部会

古澤氏

経団連は3月7日、金融・資本市場委員会企業会計部会(石原秀威部会長)を開催した。金融庁の古澤知之企画市場局長、廣川斉企業開示課長、園田周国際会計調整室長から、「企業情報開示を取り巻く昨今の状況」について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 国際的な動向

国際会計基準(IFRS)財団は、昨年11月に、「国際サステナビリティ基準審議会」(ISSB)の設置を公表した。官民一体でIFRS財団に働きかけたところ、東京のIFRS財団アジア・オセアニアオフィスの継続が決定した。IFRS財団は、気候関連開示等のプロトタイプを公表済みであり、ISSBは、今年前半にも気候関連開示基準について意見募集する予定である。ISSBの基準開発が本格化するなか、日本からは、昨年12月に設立が公表された「サステナビリティ基準委員会」(SSBJ)がオールジャパンの意見発信を担う。経団連のサポートをお願いしたい。

■ DWGの状況

(1)サステナビリティ等の開示の充実

金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(DWG)では、「サステナビリティ」「ガバナンス」「経営上の重要な契約」等の開示について検討しており、この春にも報告書を取りまとめる。その後、内閣府令を改正して有価証券報告書における記載事項を定める。適用時期については今後検討することとなるが、来年以降の有価証券報告書から開示することが考えられる。主な項目で、検討されている開示内容は以下のとおりである。

  1. サステナビリティ:
    有価証券報告書に記載欄を設け、ガバナンスやリスク管理についての情報の開示
  2. ガバナンス:
    取締役会および傘下の委員会の活動状況等の開示
  3. 経営上の重要な契約:
    企業・株主間契約、ローン・社債のコベナンツ(財務制限条項)といった契約についての開示
  4. その他:
    人的資本・多様性確保に関して、男女の賃金格差、女性管理職比率、男性の育児休業取得率等の開示
(2)四半期開示の見直し

四半期開示については、中長期的な企業価値の向上に資するとの視点のもと、2月のDWGで検討を開始した。四半期開示は、中長期計画の進捗確認のために必要であるとの意見や、四半期開示は経営の短期化をもたらしているとはいえないといった意見があった。一方で、四半期開示は金融商品取引法の四半期報告と、取引所の四半期決算短信の重複がみられることから、一本化を求める意見も複数聴かれた。

DWGでの多様な意見を踏まえ、四半期開示の見直しについては、引き続き幅広く検討する。なお、四半期開示の見直しは、(1)とは異なり、金融商品取引法の改正が必要になる事項である。

◇◇◇

意見交換では、参加企業から、四半期開示について、「四半期報告書と四半期決算短信に重複感があるのは事実なので、一本化することも一案」「四半期報告書は、四半期決算短信との重複が多いこともあって、投資家からの問い合わせは無い。四半期報告書を廃止すべき」「四半期開示を任意としても、グローバルに展開している企業は企業内外で進捗確認が必要となるため、一定の開示を継続する」「企業は、自らの責任で、内部統制を構築・運用しており、四半期開示のレビューは不要である(※)」「投資家との対話では、四半期報告書は使わないが、任意の説明資料を充実させている。全体として開示は拡充している」といった意見が出された。

※ 現在、四半期報告書には、監査人による四半期レビューを付けることが求められている

【経済基盤本部】