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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年4月7日 No.3540 デジタル化と人口減少を踏まえた競争政策 -経済法規委員会

大橋氏

経団連は3月16日、経済法規委員会(平野信行委員長)をオンラインで開催した。東京大学公共政策大学院の大橋弘院長から、デジタル化と人口減少を踏まえた競争政策のあり方について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 競争政策と産業政策

競争政策は、産業政策との相対的な関係のなかで位置付けられる。わが国では戦後から、産業政策を主軸とする立場と、市場競争を主軸とする立場が対立してきた。

前者は、わが国は資源が限られているため、資源を特定のセクターに政策的に集中投下すべきとの立場であり、産業再編を通じて強い企業を生み出すことの重要性を強調する。後者は、資源がないならば貿易を中核とするほかないとする立場であり、わが国企業が競争を通じて切磋琢磨していくことを重視する。

従来、経済界や旧通商産業省は、産業が統合して力をつけて海外進出していくべきと主張し、産業政策が優位のようにみえた。しかし、日米構造協議等を契機に産業政策が縮小し、「競争なくして成長なし」といわれる時期が続いた。産業政策は世界金融危機後から復権し、近年では経済安全保障の観点から、必要な製品を自国内で安定供給することに関心が高まり、産業政策が再び脚光を浴びつつある。

■ 規制緩和の変曲点

市場メカニズムの要諦は、消費者が自らの意思で選択する環境をつくることにある。それにより企業は、消費者に選ばれようと努力する。規制緩和は、消費者の選択肢を広げるという側面で競争政策とつながる。

近年、さまざまな分野で規制緩和の変曲点がみられる。まず、人口減少で地域の需要が減少していくなか、供給過多で競争が激化し、長期的にみて企業数の減少が避けられない。そこで、消費者にとっての選択肢を残すために、単に参入規制を緩和するのでなく、従来と異なる考え方が必要になる。

また、デジタル化に伴い、競争基盤が営利企業によって提供される状況が生じている。こうしたなか、検索順位や広告のレコメンデーション等により、消費者の自由な意思決定の前提となる情報が歪められていると指摘されるようになった。従来公的なものとして考えられてきた競争基盤について、政府が意識的にルールを考える必要がある。

今後はカーボンニュートラルに向けてCO2の共同回収、共同での技術開発など、これまで以上に提携・協働が必要となる。こうしたなか、競争政策をいかに運用するかも大きな問題である。

■ 政策的な課題

政策的課題として、まず、公正取引委員会(公取委)の透明性をいかに確保するかという論点が以前からある。わが国では、裁判例の積み重ねが少ない等の理由から、事実認定に関する知見や手続きの透明性が低い。また、専門性を確保するための体制整備も欠かせない。

グローバルな観点で海外諸国の競争政策当局と政策運用で協調を目指しながら、競争政策の執行における説明責任をステークホルダー間で確保する仕組みや、取引分野ごとに専門性を育成する組織的な仕組みも重要だろう。

◇◇◇

当日は、経済法規委員会競争法部会(大野顕司部会長)で検討を進めてきた「デジタル化とグローバル化を踏まえた競争法のあり方に関する中間論点整理案」について報告があった。同案は、3月31日に競争法部会の成案として公表した。

※ デジタル化とグローバル化を踏まえた競争法のあり方~中間論点整理
https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/030.html

【経済基盤本部】

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