1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2022年4月14日 No.3541
  5. 防衛計画の大綱に向けた提言を公表

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年4月14日 No.3541 防衛計画の大綱に向けた提言を公表 -防衛産業政策の実施を求める

経団連(十倉雅和会長)は4月12日、「防衛計画の大綱に向けた提言」を公表した。今年末に向け、政府において、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を改定する動きが本格化するなか、防衛産業政策の具体的施策の実施を求めた。概要は次のとおり。

1.防衛産業の現状

近年、国産の防衛装備品の調達予算の横ばい傾向が続くなか、米国をはじめ海外からの装備品調達が増加している(図表参照)。また、装備品の高度化と複雑化により、調達単価が上昇し、調達数量が減少している。この傾向が続けば、防衛産業の安定的な操業に支障が生じかねない。

わが国の防衛関連企業では、欧米の企業に比べて防衛事業の利益水準が低いため、事業継続についてステークホルダーへの説明に苦慮している。厳しい経営環境において、将来性が見通せず、防衛事業から撤退する企業が相次いでいる。防衛産業基盤がいったん失われると、回復するのは極めて困難である。

図表:国内向・国外向の調達額および輸入比の推移

2.防衛産業政策の具体的施策

国家安全保障戦略や防衛計画の大綱等において、防衛産業の位置付けおよび防衛産業基盤の整備・強靱化の方針について明記し、わが国の防衛産業政策の一貫性を担保すべきである。防衛産業政策の具体的な施策は以下の五つである。

(1)防衛生産・技術基盤の維持・強化

防衛省が策定した「防衛生産・技術基盤戦略」を改定し、防衛産業の育成の観点も含めた装備品調達の基本方針を策定すべきである。国産装備品の継続的な調達により予見性を確保するため、研究開発、調達、維持・整備に関する予算の確保が重要である。また、防衛産業のサプライチェーンを整備・強靱化するため、中期防衛力整備計画の別表に示された調達予定数量を確実に達成する必要がある。

(2)調達制度改革

まず、官民の適切なリスク分担を実現するとともに、防衛関連企業の適正な利益水準を実現し、新たな設備投資や技術開発を行う好循環を形成する必要がある。加えて、取得価格だけでなく、国内企業の開発技術力や製造体制の維持・強化などを長期的かつ総合的な視点から評価する制度を検討すべきである。

(3)先進的な民生技術の積極的な活用

急速な技術革新に伴い、防衛分野においても高度に先端的な技術が必要となっている。防衛省と関係府省、防衛産業と他の産業等が有機的に連携し、わが国全体として研究開発の効率性や戦略性を向上させることが重要である。

(4)防衛装備・技術の海外移転

防衛計画の大綱において、政府の外交・安全保障政策に則って、海外移転を実施する方針の策定を明記すべきである。相手国政府には日本国政府が対応することが基本であり、政府主導のもと、官民が連携して取り組むことが必要である。

(5)防衛産業サイバーセキュリティ基準への対応

防衛省が今年4月1日に同基準を策定し、2023年度の契約から適用を予定している。制度の運用にあたり、保護すべき情報の具体化や、要求基準を満たす具体的対策の明確化などの対応が必要である。

3.おわりに

今回の防衛計画の大綱等の改定は、防衛産業基盤の強化を図るための制度改革を加速する機会である。経団連として、防衛産業の発展に努め、わが国の安全保障に貢献していく。

【産業技術本部】

「2022年4月14日 No.3541」一覧はこちら