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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年4月21日 No.3542 カーボンニュートラル行動計画第三者評価委員会報告書と気候変動に関する国際情勢 -環境安全委員会地球環境部会

経団連は3月29日、環境安全委員会地球環境部会(右田彰雄部会長)をオンラインで開催した。

経団連は、2050年カーボンニュートラル(CN)の実現を今後目指すべき最も重要なゴールと位置付け、「低炭素社会実行計画」を「カーボンニュートラル行動計画」へと改め、昨年11月に公表した。このたび、21年度のフォローアップ結果に対して、カーボンニュートラル行動計画第三者評価委員会による評価報告書が取りまとめられたことから、同委員会委員長の内山洋司筑波大学名誉教授から説明を聴いた。あわせて、気候変動に関する国際情勢について、電力中央研究所の上野貴弘上席研究員から説明を聴くとともに意見交換した。

説明の概要はそれぞれ次のとおり。

■ 第三者評価委員会報告書(内山氏)

内山氏

CN行動計画の第1の柱「国内の事業活動における排出削減」について、(1)多くの業種が20年度目標を達成し、わが国の排出削減の柱として十分に貢献した点(2)30年度目標についても、CN行動計画の策定を機に、見直しのペースが加速している点――は評価に値する。一方、20年度実績については、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、経済活動量が大きく減少した。アフターコロナの世界においても、CO2排出量の削減トレンドを維持し、デジタルトランスフォーメーション(DX)も進めながら、「経済と環境の好循環」を実現していく必要がある。

第2の柱「主体間連携の強化」、第3の柱「国際貢献の推進」について、わが国企業の製品・サービス・技術による削減貢献の定量化事例の増加、削減貢献の評価手法に関する国際規格化への取り組みなどがみられたことは、評価に値する。

第4の柱「2050年CNに向けた革新的技術の開発」については、多くの業種で革新的技術のシーズが増えている。今後、グリーンイノベーション基金なども活用しながら、産・官・金が一体となり、技術開発・社会実装が着実に進むことを期待する。

■ 気候変動に関する国際情勢(上野氏)

上野氏

15年に採択されたパリ協定のもと、20年から21年にかけて、各国はNDC(国が決定する貢献)を国連に提出した。COP26において、各国のNDCを積み上げてもパリ協定の1.5℃目標からは乖離することが確認され、30年目標の再検討が合意に含まれたものの、その規定は緩いもので、目標強化の機運は高まっていない。

こうしたなか、目標を強化した一部先進国とそれ以外の国との間で、炭素コストに差が生じる可能性がある。そこで、公平な競争条件を保ち、炭素コストの高い国から低い国への「炭素リーケージ」を抑止するため、欧米を中心に国境炭素調整の検討が進んでいる。ただし、現時点では、WTOルールに整合的な制度設計は定まっておらず、今後の紛争解決機関の判決に委ねられることになる。欧州委員会は、輸入課金のみ実施し、輸出還付を行わない制度を提案しているが、これはWTOルールへの配慮に基づくと考えられる。

現在、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、欧米において、エネルギーの脱ロシア依存が進んでいる。ロシア産の化石燃料依存からの脱却についてケースごとにそれぞれ分析すると、(1)石炭回帰があれば、脱炭素とのトレードオフ(2)同一燃料の供給源切り替えであれば、ほぼ不変(3)非化石燃料への切り替えであれば、脱炭素とのシナジー――となる。国際秩序が安定しない状況では、脱炭素を含むグローバルな課題は優先されにくい。ウクライナ情勢の展開次第という面はあるが、今後の脱炭素の動向に注視が必要である。

【環境エネルギー本部】

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