Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年6月16日 No.3548  「Trusted Web」の実現に向けた政府の取り組み -デジタルエコノミー推進委員会企画部会

政府は2020年10月、内閣官房デジタル市場競争本部に「Trusted Web推進協議会」(座長=村井純慶應義塾大学教授)を設置し、インターネット上で新たな信頼の枠組みの構築を目指す「Trusted Web」の実現に向けた検討を進めている。経団連を含め、わが国が推進するDFFT(注)の実現に資するものと期待されている。

そこで、経団連は5月23日、デジタルエコノミー推進委員会企画部会(浦川伸一部会長)をオンラインで開催した。内閣官房デジタル市場競争本部事務局の池田陽子参事官補佐から、Trusted Webの実現に向けた政府の取り組みと今後の対応の方向性について説明を聴いた。概要は次のとおり。

(注)Data Free Flow with Trust、信頼性のある自由なデータ流通

■ Trusted Webの概要

現行のインターネットでは、データをやりとりする相手方やデータそのものの信頼性に懸念があるため、データの集約・統合に伴うプライバシーリスクや、産業データの囲い込み・未活用等の課題が生じている。

こうした課題を解決すべく、個人・法人によるデータのコントロールを強化する仕組み、やりとりするデータや相手方を検証できる仕組み等、新たな信頼の枠組みをインターネット上に付加することを目指した「Trusted Web構想」の検討が進められてきた。

Trusted Webは四つの機能、(1)自身の属性データ(例=年齢、連絡先)を開示する範囲をコントロールできる機能(2)第三者による“お墨付き”を受けて、発行者に都度照会せずに属性を検証できる機能(3)データのやりとりを行う際に双方でさまざまな条件を設定し、データの取り扱いに関する合意形成を行う機能(4)合意に基づいた履行がなされているかモニタリングする機能――で構成される。

Trusted Webの実現により、データの信頼性を確保しつつ、データのコントロールを可能とし、データのやりとりから生じる価値創出につなげられる。事業者間のデータ流通が促進され、さまざまなビジネスモデルが創出されるなど、将来的にDFFTの実現につながることも期待される。

■ Trusted Webをめぐるこれまでの取り組みと今後の対応の方向性

21年度は、(1)「個人」の属性情報のやりとり(2)「法人」の行政庁との情報のやりとり(3)「モノ」の付加価値の訴求につながる情報のやりとり――の3件のユースケースを分析し、(1)については、プロトタイピング(試作)の開発も行われた。

22年度は6~7月ごろに、「Trusted Web共同開発支援事業」として、データのやりとりの場面で「信頼」確保の課題に直面する企業と、解決ツールを提供できる企業との共同開発プロジェクトを募集し、プロトタイプ・システムの開発を支援する。開発期間は、プロジェクト採択後5~6カ月程度を見込んでおり、Trusted Webを構成する上述の四つの機能のうち、少なくとも三つの機能について課題を持つことを要件に、10件程度の案件を選定する予定である。

引き続き、Trusted Webの機能をさらに具体化し、国内のエンジニアや産業界、アカデミア、EU等海外のネットワークとの連携も拡大しつつ、国際標準化に向けた取り組みを推進する。引き続き、経済界の理解と協力をお願いしたい。

※ Trusted Web推進協議会ウェブサイト
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/digitalmarket/trusted_web/index.html

【産業技術本部】