Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年6月30日 No.3550  モバイル・エコシステムに関する競争評価の中間報告 -デジタルエコノミー推進委員会企画部会データ戦略ワーキング・グループ

政府のデジタル市場競争会議では、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)やアプリストア、ブラウザ、検索等のサービスから成る「モバイル・エコシステム」がデジタル市場の競争環境に与える影響等について評価を行っている。経団連としても、同システムへの政府の対応策が現行のビジネス活動や各社のデジタルトランスフォーメーション(DX)、消費者保護等に及ぼす影響を注視する必要がある。

デジタル市場競争会議における検討の結果、今般、モバイル・エコシステム等に関する競争評価中間報告が取りまとめられたことを受け、経団連は6月3日、デジタルエコノミー推進委員会企画部会データ戦略ワーキング・グループ(若目田光生主査)をオンラインで開催した。内閣官房デジタル市場競争本部事務局の成田達治次長から、二つの中間報告等について説明を聴くとともに、両報告に対する経団連の意見(※)を取りまとめるべく内部討議を行った。成田氏の説明の概要は次のとおり。

■ 「モバイル・エコシステムに関する競争評価 中間報告」の概要

モバイル・エコシステムは、少数のプラットフォーム事業者による寡占状態にあり、他の事業者の参入が抑制されるなど、競争上の懸念が生じている。多様な主体によるイノベーションや消費者の選択の機会を確保すべく、従来の競争法とは異なるアプローチで、モバイル・エコシステムの特性に配慮した規制のあり方を検討していく必要がある。

そこで、今般の中間報告では、モバイル・エコシステム内のあらゆる階層に共通した行為類型上の課題にいかに対応していくかなど、方向性を整理している。例えば、競争に悪影響を及ぼす危険性の高い行為を禁止する一方で、情報提供を義務付けるなど、さまざまな対応策をオプションとして提示している。

■ 「新たな顧客接点(ボイスアシスタント及びウェアラブル)に関する競争評価 中間報告」の概要

ボイスアシスタント(スマートフォンやスマートスピーカー等に搭載されている、話し言葉による問いかけや要求に音声で回答したり、動作したりする機能・サービス)の音声による入力・出力や、ウエアラブル(スマートウオッチ等、身に着けて使用するタイプの端末)は顧客との接点であり、プラットフォーム事業者が新たなエコシステムを形成する際の基盤となり得る。デジタル市場においては、こうした新たな顧客接点の獲得・拡大が競争力強化のカギを握るが、強力な顧客接点を有する既存事業者がその優越的な地位を武器に、新たな顧客接点の獲得・拡大を行うことは、ひいては市場の寡占化を招くおそれがある。

他方、新規顧客接点は発展途上ということもあり、過度な市場介入はイノベーションを阻害するリスクもある。そこで、寡占化に伴う競争上の懸念を未然に防ぎつつ、市場の成長やイノベーションを阻害しないよう、エコシステム内のルール設定や、データへのアクセス制限、デフォルト設定等の観点から対応策を提示している。

■ 今後の進め方

これら二つの中間報告では、モバイル・エコシステム等の競争環境をめぐる課題を整理し、考えられる対応のオプションや留意点等を示している。今後、議論・検討すべき論点をさらに明確化し、最終報告に向けて、経団連を含め関係各位の意見をいただく予定である。

※ 「モバイル・エコシステムに関する競争評価 中間報告」及び「新たな顧客接点(ボイスアシスタント及びウェアラブル)に関する競争評価 中間報告」への意見
https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/063.html

【産業技術本部】