Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年7月28日 No.3554  クリーンエネルギー戦略 中間整理 -山下資源エネルギー庁次長から聴く

山下氏

経団連の環境委員会(杉森務委員長、小堀秀毅委員長、野田由美子委員長)と資源・エネルギー対策委員会(隅修三委員長、市川秀夫委員長)は6月29日、クリーンエネルギー戦略に関する懇談会をオンラインで開催した。資源エネルギー庁の山下隆一次長から、政府が5月に公表した「クリーンエネルギー戦略 中間整理」(中間整理)の概要等について説明を聴いた。説明の概要は次のとおり。

今回の中間整理では、まず第一章において、昨今のロシア・ウクライナ情勢や国内の電力需給逼迫を踏まえ、エネルギー安全保障の確保に万全を期したうえで、脱炭素を加速させるためのエネルギー政策の課題を整理した。続く第二章では、産業のグリーントランスフォーメーション(GX)、産業界のエネルギー転換の道筋や取り組み、地域・暮らしの脱炭素化に向けた具体的取り組みを示したうえで、GXの実現に必要となる政策等を提示した。

特に、エネルギー安全保障について、日本の一次エネルギー自給率は11%と、G7で最も低い。ロシアへのエネルギー依存度は各国により状況が異なるものの、ドイツやイタリアは依存度が高い。

こうしたなか、日本とEUでは、カーボンニュートラルに向けた従来の「中長期的な」トランジション(移行)の前段階として、ロシアへの依存を低減するための「短期的な」トランジションも必要となっている。かかる観点から、2022年4月に岸田文雄内閣総理大臣は、「再エネ・原子力などエネルギー安全保障および脱炭素の効果の高い電源の最大限の活用」を表明している。

わが国におけるエネルギー安全保障・脱炭素化の政策の方向性として、まず、電力の供給力確保に向けて、休止電源の再稼働や脱炭素電源への新規投資を促す制度措置等を検討していく。あわせて、原子力発電所について、再稼働の推進やバックエンド対策(放射性廃棄物の処理等)、研究開発等も進めていく。さらに、再エネの最大限の導入、水素・アンモニアの大規模サプライチェーン構築、CCS(二酸化炭素回収・貯留)の事業化支援等にも取り組んでいく。

エネルギー需要サイドでは、中小事業者の省エネポテンシャルの掘り起こしをはじめ、住宅・建築物の省エネ規制強化、熱利用の高効率化・脱炭素化等を進めていく。

日本全体でカーボンニュートラルを目指すにあたっては、経済成長も実現しなければならない。エネルギー需給構造や産業構造の転換が不可欠となるなか、エネルギーコストの上昇が見込まれる。産業界の過度な負担とならないよう、社会全体でコストを適切に負担していくことも検討が必要である。

今回の中間整理を踏まえ、今後、「GX実行会議」を官邸に設置し、クリーンエネルギー戦略等の検討を深めていく。その際、政策の予見性を高める観点から、次の臨時国会や通常国会への関連法案の提出を目指す。

GXの検討にあたっては、経済界の知見が非常に重要となる。引き続き、経団連と一体となって議論を進めていきたい。

【環境エネルギー本部】