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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年9月8日 No.3558 かかりつけ医機能の整備を含めた医療提供体制の改革 -社会保障委員会医療・介護改革部会

堀氏

経団連は8月3日、社会保障委員会医療・介護改革部会(本多孝一部会長)をオンラインで開催した。東海大学の堀真奈美健康学部長・健康学部健康マネジメント学科教授から、かかりつけ医機能の整備を含めた医療提供体制の改革について説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。

■ アフターコロナを見据えた未来志向での改革の必要性

社会保障を取り巻く環境は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、より深刻な状態となっている。新型コロナ対策は多額の公債発行に依存し、国家財政は大きく悪化した。こうしたなかでも、わが国の社会保障給付費は高齢化により、年々大幅に増加している。

労働力人口が減少し、成長力低下、国内市場縮小という人口オーナス社会の負のスパイラルから脱却するためには、アフターコロナを見据えた中長期的な社会保障制度の改革の方向性を未来志向で示していく必要がある。

こうしたなか、政府の全世代型社会保障構築会議では、議論の中間整理において、2040年を見据えた改革事項の方向性を示した。医療・介護分野において注目すべき点は、提供体制の改革や社会保障全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を掲げていることである。こうした方針は、骨太方針2022においても反映された。

■ かかりつけ医機能の実装・制度化に向けて

コロナ禍のもと、行政は、発熱等の症状が生じた場合、まず、かかりつけ医を受診するよう勧奨したこともあり、かかりつけ医の存在が注目されている。しかし、患者側から「かかりつけ医とは何か」「どの医療機関がかかりつけ医なのか」といった声が聞かれた。かかりつけ医の定義については、医療関連団体からも出されているが、一般的な認知度が低く、患者と医療側の間には認識のギャップが少なからずある。

したがって、今後、かかりつけ医機能を実装するには、定義や機能を法律上明確にすることが欠かせない。また、かかりつけ医を担う人材育成や、グループ診療、多職種連携も含めた、かかりつけ医機能発揮のための環境整備も求められる。これらが制度化されるなかで、医療の機能に応じた診療報酬上の評価が議論されるべきだろう。

かかりつけ医の普及には、患者、国民がそのメリットを実感できるように、患者の受診行動の変容を促す必要もある。その基盤として、エビデンスに基づいたデータヘルス改革に取り組み、さまざまな情報を蓄積・共有することで、サービスの提供の仕方を大きく変える医療DXの推進も重要である。現状、普及の進んでいないオンライン診療をかかりつけ医機能の普及と組み合わせて促進することも有用だろう。

今回述べたかかりつけ医機能の実装、制度化が進まなければ、これまで同様、情報の非対称性のもと患者の不安は拡大し、コスト意識の欠如、資源の無駄遣いが続いてしまう。かかりつけ医機能の実装、制度化を進め、医療の受け方や提供の仕方を新たに変えることで、地域包括ケアの実現、サービスの質や患者のQOL(Quality of Life)の向上を図り、医療制度の持続可能性も高めていくべきである。

【経済政策本部】

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