Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年10月6日 No.3561  長谷川気象庁長官との懇談会を開催 -防災・減災、気候変動、気象データの活用をめぐり意見交換

長谷川長官

十倉会長

経団連(十倉雅和会長)は9月14日、東京・大手町の経団連会館で長谷川直之気象庁長官との懇談会を開催した。気象庁からは長谷川長官をはじめ幹部が、経団連からは十倉会長、篠原弘道副会長、永野毅副会長、小堀秀毅副会長らが出席し、防災・減災、気候変動、気象データの利活用などについて意見交換した。気象庁長官と経団連会長との会合を開催したのは初めてである。概要は次のとおり。

■ 十倉会長あいさつ

気象は経済活動の全般に大きな影響を及ぼす。産業界として、気象の変化や影響を正確かつ迅速に把握する必要がある。

近年、台風や地震などの災害が激甚化しており、わが国の経済社会に大きな被害が生じている。気象衛星などのデータを活用し、防災・減災の対策を強化することが求められる。

また、世界的な異常気象の頻発など、気候変動はますます深刻化している。経団連は2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、グリーントランスフォーメーション(GX)を推進している。

加えて、社会のデジタル化が急速に進むなか、衛星データの活用や宇宙技術の応用は新たな価値を創出し、超スマート社会「Society 5.0」の実現に寄与する。

■ 長谷川長官説明

気象庁は、30年の科学技術を見据えた気象業務のあるべき姿を目標に、取り組みを進めている。Society 5.0の実現に向けて、予測精度の向上などの技術開発、データや情報の利活用を促進している。

近年、地球温暖化の影響等により集中豪雨の発生頻度が増加しているだけでなく、強い台風の発生が増えると予測されており、線状降水帯や台風の予測精度の向上に取り組んでいる。気象衛星やレーダーなどで収集した観測データをスーパーコンピューターやAI(人工知能)などを駆使して解析し、予報官の判断と組み合わせることにより、22年から線状降水帯の予測を始めた。予測精度をさらに向上させるため、29年からの運用開始を目指している次期静止気象衛星「ひまわり」に、最新の観測センサである「赤外サウンダ」を導入することを計画している。

11年の東北地方太平洋沖地震を契機に、マグニチュード8を超える巨大地震が発生した場合、最大クラスの津波を想定して津波警報などを発表している。南海トラフ地震の発生の切迫性が指摘されており、想定震源域で大規模地震が発生した際に、後に続く地震への警戒を呼びかける「南海トラフ地震臨時情報」を発表し、一部住民の避難とともに、日ごろからの地震の備えへの再確認を促すこととしている。

わが国は火山大国であり、111の活火山のうち49火山について噴火警戒レベルを運用し、活動状況に応じて警報等を発表している。大規模噴火が発生した場合の火山灰への対策について、富士山では江戸時代の宝永噴火をモデルケースにして検討している。

気象データは、小売や電力の需給予測などのビジネスで活用されている。さらなる活用を目指し、産学官が連携して「気象ビジネス推進コンソーシアム」を設立し、人材育成等を進めている。

今後、デジタルトランスフォーメーション(DX)社会に対応した気象サービスを推進する。気象情報やデータをビッグデータとしてクラウド上に置き、誰でも利用できる環境の構築を目指す。

■ 意見交換

経団連側は、線状降水帯や台風の予測精度の向上、気象データの利活用の推進への期待を示すとともに、気象庁や気象ビジネス推進コンソーシアムとの連携の強化なども提案した。長谷川長官は、「予測精度向上のため、気象衛星などによる監視技術および数値予報やAIによる予測技術の開発とともに、予報官の判断の客観化に取り組む。気象庁や民間の観測データ等の利活用も促進したい。経団連と具体的に連携していきたい」と応じた。

【産業技術本部】