1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2022年10月6日 No.3561
  5. バイオエコノミーをめぐる最新の動向とNEDOの取り組み

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年10月6日 No.3561 バイオエコノミーをめぐる最新の動向とNEDOの取り組み -バイオエコノミー委員会企画部会

経団連は9月7日、東京・大手町の経団連会館でバイオエコノミー委員会企画部会(藤原尚也部会長)の初回会合を対面とオンラインのハイブリッド形式により開催した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術戦略研究センターバイオエコノミーユニットの水無渉ユニット長から、バイオエコノミー分野をめぐる最新の動向と課題、NEDOの取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ バイオへの期待

バイオは、工業、健康・医療、食・農業など、幅広い産業分野で活用が期待されている。バイオはデジタルとの相性も良い。第4次産業革命において重要な役割を演じ、豊かで持続可能な社会の実現につながることが期待されている。

バイオを産業に活用する際には、生物機能活用、生物素材活用、生物システム活用の三つの視点が重要である。生物機能活用は、生物が持つ酵素触媒等の機能を活用して新しいモノづくりを行うことである。生物素材活用は、生物を再生産可能なバイオ原料として利用することである。生物システム活用は、臓器チップやバイオ機能素材のようなリビングデバイスに生物が持つ生体維持のシステムを活用する試みである。

生物は化学合成でつくりにくい高分子化合物を製造することが得意で、未知の可能性が眠っている。健康・医療に加えて、環境調和・融和型の循環型社会形成に向けてバイオへの期待がますます高まっている。先進解析技術による生体情報に関するビッグデータ取得コストの低下、ビッグデータを有効に活用したデジタル化、ゲノム編集などの効率的・革新的な育種技術による研究開発の高速化によって、技術開発の競争も激化している。

■ 各国の動向

世界各国において、バイオエコノミーの実現を目標に掲げた国家戦略の策定が進む。米国は、2012年にバイオエコノミーに関する戦略を発表し、その後、具体的な政策提言もまとめた。バイオエコノミーの定義を明確化するとともに、定点観測の重要性を提起している。最近では、経済安全保障の観点から、バイオサイバーセキュリティやバイオディフェンスに対する議論も進んでいる。欧州は、欧州全体あるいは各国でバイオエコノミー戦略を策定している。欧州グリーンディールのなかでもバイオ燃料や食糧・農業への取り組みの重要性が示されており、標準化やルールづくりの議論にも注視が必要である。日本においても、19年にバイオ戦略が作成され、毎年更新されている。

■ NEDOの取り組み

20年2月に、NEDO技術戦略研究センターは「持続可能な社会の実現に向けた技術開発総合指針」(NEDO総合指針)を策定した。同指針では、サーキュラーエコノミー、持続可能なエネルギー、バイオエコノミーの三つの社会システムの調和が革新技術の社会実装により促進されるという理念のもと、それらが統合した炭素循環社会の将来像を提案している。

バイオに関しては「生物機能を利用した物質生産」技術戦略を策定している。スマートセルによる効率的な物質増産、高機能物質の生産、化学合成プロセスからバイオプロセスへの代替を目指して、基盤技術開発から社会実装まで取り組んでいる。

【産業技術本部】

「2022年10月6日 No.3561」一覧はこちら