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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年10月6日 No.3561 21世紀政策研究所が講演会「混沌とした世界情勢におけるバイデン政権の課題」を開催

ケネディ氏

21世紀政策研究所(十倉雅和会長)は9月13日、米国研究プロジェクト(研究主幹=久保文明防衛大学校長)の一環として、米国ウッドロー・ウィルソン国際学術センター研究員のマーク・ケネディ氏による講演会を開催した。ケネディ氏は、元米国連邦下院議員、コロラド大学名誉学長等の多彩で豊富なキャリアを有しており、ウクライナ後の日米同盟と経済安全保障、サプライチェーン、エネルギー、グローバルガバナンス等について幅広く語った。同氏による講演および久保研究主幹との対談における発言要旨は次のとおり。

■ 米国中間選挙最大の争点は経済問題

11月に中間選挙を控えているが、最近の世論調査によると外交より経済が重視される結果が出ている。多くの人がバイデン大統領の政策が経済を悪化させたと考えたため、支持率が低くなっている。今回の中間選挙では、上院はわからないが下院は共和党が奪還するだろうとの予測もなされている。下院を共和党が押さえると立法活動が難航する可能性が高くなり、共和党からの政権に対する調査や問題点の追及も厳しくなるであろう。一方、インフレ抑制法や気候変動対応はバイデン大統領がアピールできる功績である。

■ 米中の競争激化

ケネディ氏(左)と久保研究主幹

中国は経済力、貿易、研究開発、技術力、軍事力の面で、米国にとって前例のないほどの存在になっている。WTO加盟の際は、ルールに基づく国際秩序に組み込まれることが期待されたが、そうなっていない。南シナ海では海洋権益確保のため、国際法によって正当化されない主張を繰り返している。香港では一国二制度の約束をほごにした。新疆ウイグル自治区への対応も問題である。一方でイランと手を組み、ロシアと無限の友情を宣言している。中国はわれわれと違うルールでゲームをしているのであり、中国を変えられるかといえば、変えられないであろう。おそらく10月、習近平氏の3期目の続投が承認されるであろうが、彼がさらに積極的になるのか、穏健になるのかによって、中国の将来に対する見方が決まってくると考えられる。

■ サプライチェーン・エネルギー問題

サプライチェーンは企業にとって極めて重要である。中国は、各国の米国への依存度を低下させる一方、鉱物・レアアース、エレクトロニクス産業などで中国への依存度を高めようとしている。対中警戒の観点からは、日本、韓国、欧州各国の中国への依存度の高さが懸念材料であり、サプライチェーンの多様化に注力すべきとの指摘がある。エネルギーについては、米国が石油や天然ガスなど伝統的な領域において、産出量で世界をリードしているが、持続可能なエネルギー分野、特に太陽光発電に関する原材料の生産等では、中国がほぼ独占的なシェアを占めている。

■ 世界秩序維持のための今後の方向性

日米は中国と競争する一方で、核兵器拡散防止、ならびに気候変動、パンデミックおよび経済危機への対応といった、互いに共有し得る利益については、オープンな姿勢で中国とも協力していくべきである。他方、侵略抑止の継続に向け、強制や権威主義ではなく、民主主義的な価値観をベースとした国際ルールによって世界秩序を保つ必要があり、民主主義国家側の同盟の重要性が一層増している。また、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた日米豪印戦略対話(QUAD)の取り組みも極めて重要である。

【21世紀政策研究所】

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