経団連企業人政治フォーラム(片野坂真哉会長)は9月29日、東京・大手町の経団連会館で講演会を開催した。内閣官房副長官を務める木原誠二衆議院議員が、「昨今の経済動向と政策展望」をテーマに、岸田政権における今後の重要政策課題への対応等について講演した。概要は次のとおり。
本日9月29日は、2021年の自民党総裁選で岸田文雄新総裁が選出された日であり、岸田内閣はまもなく1年を迎える。また、1972年9月29日の日中共同声明から50年という大きな節目の日にあたる。この50年間で、両国間の貿易額は約120倍になり、そしてコロナ禍前の人的往来は年間1200万人を超えるなど、わが国は中国と密接な関係を築いてきた。しかし近年、米ソ冷戦とは様相が異なる米中対立の激化をはじめ、両国の関係には、これまでになく難しいかじ取りが求められている。「建設的かつ安定的な日中関係」を双方の努力で構築できるよう、戦略的な視点を持って対応していく必要がある。
今後の政策課題を考えるうえで、世界が、冷戦後の国境なきグローバル化の時代から、権威主義体制と民主主義国家の対立による分断の時代に入る可能性があることを考慮する必要がある。そうした可能性にも対応できるよう、(1)「新しい資本主義」による日本の経済力の抜本的な強化(2)厳しい国際情勢・安全保障環境を踏まえた経済安全保障の強化(3)現下の物価・エネルギー価格高騰などの経済情勢への的確な対応――の三つに取り組んでいく。
「新しい資本主義」のもとでは、社会課題を障害ととらえず、成長のエンジンとし、官民連携を通じて、投資の加速・重点化が求められる。特にカギを握るのは、(1)人への投資(2)科学技術・イノベーションへの投資(3)スタートアップへの投資(4)グリーントランスフォーメーション(GX)およびデジタルトランスフォーメーション(DX)への投資――の4本柱である。同時に、わが国では、予算を伴う国家戦略がほとんど存在しないことから、とりわけ量子やAI、バイオ、再生医療等の分野に関し、予算が明確に伴う国家戦略を策定し、投資を引き付けていきたい。
また、経済安全保障の推進に向けて、サプライチェーン等の脆弱性解消とともに、基幹インフラ役務の安定的な提供の確保など、法制上の手当てを含め、政府として着実に取り組む。
さらに、足元で急速な円安、物価高騰が進んでいることを踏まえ、大規模な経済対策を講じられるよう、臨時国会において補正予算案等を編成・審議する予定である。
あわせて、企業の製造拠点の国内への回帰などによる供給力の強化や、インバウンドの回復など、円安のメリットを活かす方向で、わが国の稼ぐ力を強化する取り組みが重要になる。特に、インバウンドについては、10月11日から、新型コロナウイルスの水際措置を緩和し、ビザなし短期渡航や個人旅行が再開する。国内においても、「全国旅行支援」をはじめとする振興策を展開していく。円安の機会をとらえて、人の移動・往来を活性化できるよう、各種の取り組みを加速していく。
加えて、電力価格高騰への対応として、補正予算等で踏み込んだ方策を講じるとともに、電力・エネルギーの供給安定化を念頭に、原子力発電の活用に向け、安全性の確保を大前提とした原子力発電所の運転期間の延長や、次世代革新炉の開発・建設などについて、2022年末までに具体的な結論を出せるよう集中的・専門的に検討・議論を重ねていく。なお、2050年カーボンニュートラルに向けて、今後10年間に官民協調で150兆円規模のGX投資を実現すべく、GX経済移行債(仮称)の創設や、ロードマップの策定に取り組む。
防衛力を5年以内に抜本的に強化することを念頭に、安全保障の強化に向けた取り組みを進めるなど、内外の各種重要政策課題の対応に邁進していく。
【総務本部】
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