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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年10月20日 No.3563 大学ファンドを通じた世界最高水準の研究大学の実現に向けて -イノベーション委員会企画部会

経団連は9月26日、イノベーション委員会企画部会(江村克己部会長)をオンラインで開催した。文部科学省の木村直人大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、研究振興局の馬場大輔大学研究力強化室長から、国際卓越研究大学法に基づく基本方針案について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 大学ファンドの創設

海外で科学技術への投資が拡大し、産業構造の転換が起きるなかで、わが国の研究力およびイノベーション力は相対的に低下している。海外に目を向けると、米ハーバード大学をはじめとする諸大学は着実に成長を遂げており、大学独自の基金を充実させている。それらの基金は、事業運営の独立性の確保、財政面の安定性の向上に貢献しており、米国、英国をはじめとした欧米の高等教育機関の層に厚みをもたらしている。このような背景を踏まえ、世界に伍する研究大学を実現するため大学ファンドを創設することとした。

2021年10月、岸田文雄内閣総理大臣は初めての所信表明演説において、新しい資本主義を実現するための成長戦略の第一の柱として「科学技術立国の実現」を掲げ、そのなかで大学ファンドの創設について触れた。このことからもわかるように、世界最高水準の研究大学の実現に向け、文科省だけでなく財政当局などを含め、政府が一丸となって取り組んでいる。

■ 国際卓越研究大学法に基づく基本方針

国際卓越研究大学の認定は、これまでの実績や蓄積のみではなく、世界最高水準の研究大学の実現に向けた「変革」への意思(ビジョン)とコミットメントの提示に基づき判断する。また、大学認定と計画認可の審査プロセスを一体的に実施するほか、公募期間は数カ月程度確保し、審査の際には研究現場の状況把握や大学側との丁寧な対話を実施する。国際卓越研究大学は、人材・知・資金の好循環を生み出し、持続的な成長へとつなげなければならない。そのため、価値創造や社会課題解決に資する研究基盤に加え、自然科学・人文・社会科学を含め、長期的視野に立った新たな学問分野や若手研究者へ投資するなど、次世代の知・人材の創出にも取り組むことが求められる。なお、国際卓越研究大学の認定は、制度の趣旨を踏まえ、数校程度とする予定である。

■ 地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ

わが国は、全都道府県に国立大学を有するなど、地域の国公私立大学が学術研究の層の厚みや研究者の多様性を生む土壌となっている。わが国全体の研究力を底上げするうえでは、全国の大学が、個々の強みを伸ばし、各大学のミッションのもと、多様な研究大学群を形成することが必要である。そのため、大学ファンドによる国際卓越研究大学への支援のみならず、地域の中核大学や特定分野の強みを持つ多様な大学の機能を強化することが重要である。政府として「総合振興パッケージ」を策定して、共に発展していく環境を整備する。

■ 総括

諸外国では、大学を中核に、知・人材・資金の好循環に向けた取り組みが加速している。国際卓越研究大学は、社会の多様な主体と常に対話し、協調しながら、イノベーション・エコシステムの中核としての役割を果たすことが求められる。産業界と連携し、大学の国際競争力強化に向けた取り組みを強化したい。

【産業技術本部】

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