Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年11月10日 No.3566  第54回東北地方経済懇談会を開催

経団連と東北経済連合会(東経連、増子次郎会長)は10月18日、仙台市内で「第54回東北地方経済懇談会」を開催した。経団連からは、十倉雅和会長、冨田哲郎審議員会議長をはじめ副会長らが、東経連からは増子会長をはじめ会員約110人が参加し、「コロナ禍を経て経済界が描く社会変革の姿」を基本テーマに意見交換した。

冒頭の開会あいさつで東経連の増子会長は、「コロナ禍を経て社会変革を促し、イノベーションを加速するためには、『科学技術の力』と『人の力』がカギを握る」と述べ、こうした観点に基づく経団連との懇談に大きな意欲を見せた。

続いて、経団連の十倉会長は、「サステイナブルな資本主義の実践」に基づくグリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、分厚い中間層の形成等を中心に、経団連が取り組む施策について紹介したうえで、「科学技術力をトリガーとして、復興の推進、東北の創生、わが国科学技術力や国際競争力の強化等につながることを期待している」と述べ、東経連の取り組みに期待を寄せた。

■ テーマ1「地域産業の成長とイノベーションの創出」

まず、地域産業の成長とイノベーションに関して、東経連からの問題提起に対し経団連から、

  1. (1)Society 5.0の実現に向けて、社会のあらゆる主体が融合できるよう、分野を超えたオープンイノベーションのエコシステムを構築することが重要(篠原弘道副会長)
  2. (2)経済社会全体の変革であるGXの実現に向けて、官民一体で変革を推し進めるためのグランドデザインとロードマップが必須(平野信行副会長)
  3. (3)DXならびにGXの推進には規制改革が不可欠である。新たな技術・サービスの活用、多様な人材の活躍を阻害する時代遅れの規制を撤廃し、イノベーションと価値創造を呼び起こす制度となる規制改革要望の取りまとめに尽力している(佐藤康博副会長)
  4. (4)国際秩序を揺るがす事態が発生しているからこそ、2023年のG7議長国である日本がリーダーシップを発揮し、自由で開かれた国際経済秩序を再構築することが求められる(中村邦晴副会長)
  5. (5)「Society 5.0 for SDGs」の実現に向けた価値創造やバリューチェーンの構築、リスクマネジメントの観点から、実効あるサイバーセキュリティ対策を講じることは、経営において非常に重要である(遠藤信博副会長)

――との発言があった。

■ テーマ2「復興の着実な推進と地方の経済・社会の活性化」

続いて、復興ならびに地方の活性化について、東経連からの問題提起に対し経団連から、

  1. (1)労働時間の削減を中心とするフェーズ1に加え、エンゲージメントを高めることで生産性向上を目指すフェーズ2の取り組みを強化している。その成果を首都圏と地方の人材交流の活性化、地方創生の実現につなげていけるよう、取り組みを加速したい(小路明善副会長)
  2. (2)近年頻発する大規模な自然災害を受けて、広範にわたる復興支援の必要性が高まっている。災害復興特別委員会において、より効果的な復興支援のあり方について検討し、官民連携により活動している(永野毅副会長)
  3. (3)全国知事会と共に取りまとめた「協働推進宣言」に基づき、東北において交流人口や関係人口等の新しい人の流れを創出することで、継続的な復興支援でも効果をあげていきたい(永井浩二副会長)

――との発言があった。

最後に、冨田審議員会議長が「各分野での取り組みについて、単なる口だけの目標にとどめず、具体的なアクションを実行すべく、フォローアップを続け、PDCAを回転させながら地域の皆さまと力を合わせて尽力していきたい」と総括した。

意見交換の後、経団連と東経連は今回の懇談会の総括として、共同宣言「科学技術を源泉とする産業競争力の強化により、社会変革の姿を描く」を採択し、両団体が連携して科学技術プロジェクトの着実な推進に取り組み、わが国産業のさらなる成長・革新に挑んでいくことを表明した。

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同日、一行は東北大学青葉山新キャンパスを視察。東北大学の大野英男総長から、「研究第一」「門戸開放」「実学尊重」の理念に基づく教育・研究について聴いた。また、同大学内で建設工事中の次世代放射光施設(ナノテラス)で、光科学イノベーションセンターの高田昌樹理事長が、いわゆる「ナノまで見える巨大な顕微鏡」が実現する仕組みや研究成果等について説明。GX、DXをはじめ、さまざまな課題解決の実現に資する新たな技術およびサービスの創出等、同大における今後の研究の展望について理解を一層深めた。

【総務本部】