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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年11月10日 No.3566 新井消費者庁長官と意見交換 -消費者政策委員会

新井氏

経団連は10月18日、東京・大手町の経団連会館で消費者政策委員会(渡邉光一郎委員長、杉山博孝委員長)を開催した。消費者庁の新井ゆたか長官(2022年7月就任)から、消費者政策の現状と展望について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 消費者法の将来

消費者庁の使命は、消費者の権利保護と自立支援である。現在、高齢化や孤独、孤立、デジタル化の進展等の社会情勢の変化や、消費者の「限定合理性」を考慮した消費者法制のあり方を検討している。これまでは、消費者像として合理的な経済主体を想定してきたが、例えば、加齢によって人の認知機能は低下し脆弱な経済主体となる。高齢化等を前提とした社会システムを構築するなかにおいて、消費者像として引き続き合理的な経済主体を想定しつつも、脆弱な経済主体をどう取り込むか模索している。

■ 表示の適正化に向けた検討

現在、景品表示法の改正に向けて検討している。例えば、調査開始後に法違反が疑われる行為の概要等を事業者に通知した後、事業者の作成した確約計画が認定されれば、行政処分を行わないといった「確約手続」の新設である。事業者の自主的な取り組みを促進し、早期に問題が是正される糸口をつくろうとする制度であるといえる。また、「広告」と明示しないで商品等の優位性を宣伝する「ステルスマーケティング」の問題が発生しており、規制のあり方を含め、速やかに検討を進める。

■ 食の分野における消費者庁の役割の増加

日本の食品の品質・衛生に関する表示制度が、国際基準と異なるという実態がある。食料サプライチェーンのグローバル化に対応するためにも、必要な見直しを行っていく。また、24年度に食品衛生に関する規格・基準の策定が消費者庁に移管される予定である。食の分野において消費者庁の役割を果たしていく。

■ 消費者の自立の支援

SDGsの目標12に「つくる責任、つかう責任」が掲げられている。消費者がどのように責任を果たし、企業活動との循環をつくっていくかが重要になる。行政独自の取り組みに加えて、消費者と近くで接する事業者と協働して、消費者教育を推進していきたい。消費者をより良いかたちに導いていく「消費者志向経営」は、まさに企業の発展につながる。消費者のことを考える企業であるということが、従業員のインセンティブにつながっていく。従業員が「自分ごと」として働く意義を見いだせることは、組織の経営理念、存在意義を共有するパーパス(目的)経営に通じるものがある。消費者の自立の支援は、消費者を甘やかすということではない。従業員を守るため、理不尽な要求や悪質なクレームに対して毅然とした対応をとることも重要である。国民全員が消費者であるという視点に立って、消費者行政を進めていく。

◇◇◇

説明後、日本のエシカル消費の促進と市場の現状、地域の見守りネットワークと高齢者への啓発、デジタル分野の自主規制等について活発に意見交換した。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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