Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年11月24日 No.3568  スタートアップ等を対象とした技術・データ等の流出防止に関する経済安全保障説明会

近氏

経団連は10月31日、スタートアップ等を対象とした技術・データ等の流出防止に関する経済安全保障説明会を東京・大手町の経団連会館で開催した。公安調査庁の近智徳経済安全保障特別調査室長ならびに同室情報分析官から、経済安全保障の確保に向けた技術・データ流出防止にかかる説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ スタートアップが標的となるリスク

スタートアップが保有する優れた技術や製品等は、投資・買収や共同研究などの通常の活動、あるいは不正調達や諜報活動、サイバー攻撃といった不正な活動によって懸念国から狙われる可能性がある。実際にスタートアップが資金調達等の場面で技術情報を要求される事例も確認されており、十分な注意が必要である。

■ 経済安全保障をめぐる動向

経済安全保障の背景には米中の「技術覇権」をめぐる対立がある。米国が輸出規制や投資規制の強化など諸々の施策を打ち出す一方、中国は反外国制裁法など米国の規制を意識した対抗措置を講じている。先日開催された中国共産党大会でも米国への対抗姿勢が示されており、日本企業が両国の間で板挟みになることが懸念される。また、ロシアによるウクライナ侵略も経済安全保障に大きな影響を与えている。ロシアは、西側諸国が課した各種制裁に対抗する動きをみせている。加えて、ロシア軍が使用した兵器の部品に日本製のものが用いられたと報じられている。これは企業のレピュテーションリスクにもかかわる重要な問題であり、引き続き情勢を注視していく必要がある。

■ わが国で注目すべき動向

懸念国政府または懸念国政府の影響下にある組織によって行われる技術・データへのアプローチにはさまざまな経路がある。まずは、各企業で関係する事例や働きかけの手法等を認識したうえで、個別の対策を検討していくことが重要である。特に、スタートアップは、(1)資金調達(2)買収(3)共同研究(4)人材交流(5)リクルート(6)サイバー攻撃(7)産業スパイ――に留意すべきである。

■ 官民連携の重要性

経済安全保障分野では特に官民連携が重要である。公安調査庁は、懸念国による技術・データの調達・窃取を企図した不審動向等に関する情報を収集・分析している。企業・大学とも知見を共有して、意図しない技術流出の防止に貢献していきたいと考えている。

同庁ウェブサイトには、経済安全保障やサイバーに関するパンフレットも掲載しているほか、個別の相談や講演・研修依頼等の窓口(psia-es@i.moj.go.jp)も設けている。気になる点があれば、ぜひ連絡してほしい。今回は日本における事案を中心に扱ったが、国外での事案等について説明することも可能である。

公安調査庁「経済安全保障に関するご相談・講演依頼等窓口」
https://www.moj.go.jp/psia/kouan_mail_keizaianpo.html

【産業技術本部】