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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年12月8日 No.3570 バイオ・ライフサイエンスに関する米国の動向 -日本企業にとってのチャンスと課題/バイオエコノミー委員会企画部会

経団連は11月16日、バイオエコノミー委員会企画部会(藤原尚也部会長)を東京・大手町の経団連会館で開催した。グリーンバーグ・トラウリグ法律事務所のロ・チア・フィン弁護士から、米国におけるバイオ・ライフサイエンスの政策ならびに関連産業の動向、日本企業にとっての米国市場におけるチャンスと課題について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 米国の立ち位置

業界がどのように成長し、繁栄するかは、マインドセットによって決定付けられる。米国人のマインドセットを構成する「個人主義」「法の支配」「安全保障への意識」が米国におけるバイオエコノミーの基礎をなすことで、その繫栄が実現している。

■ 日本の立ち位置

日本のバイオエコノミーの発展において、技術、人材、資金に大きな課題がある。

  1. (1)技術=日本発の画期的なイノベーションが減り続けており、世界で起こるイノベーションに対する日本の貢献度も低下している。また、スタートアップの成長を促す土壌が十分でない。スタートアップの多くが日本向けのビジネスのみに注力している。

  2. (2)人材=日本を拠点とする才能ある人材が、ますます日本のみに焦点を当てている。また、才能ある海外の人材を引き付けるほどの魅力が日本にない。

  3. (3)資金=日本の国内市場の衰退は、投資へのインセンティブを低下させている。また、市場規模が十分でないため、日本企業の海外展開を妨げている。

■ 日本の今後の方向性

米国のバイオエコノミーのベースは米国文化である。つまり、日本は米国のバイオエコノミーをコピーできないということである。そのため、日本のバイオエコノミー発展のためには独自の方法を考える必要がある。

iPS細胞をはじめとするCGT(遺伝子治療)と医療制度は日本の強みであり、バイオに関するエコシステムの構築が期待される。またCDMO(医薬品受託製造)事業の拡大を加速すべきである。バイオマニュファクチャリングの専門知識と能力は、医薬品の開発とコスト管理の成功をサポートするために重要になってくる。

日本のステークホルダーにとって重要なことは、日本のルールをグローバルスタンダードにすることである。そのために、日本はいまだ満たされていない海外のニーズにおいて貢献し、グローバルなルールをつくっていくべきである。例えば、米国ではまれだがアジアでは多い疾患に対して、日本企業がアプローチして結果を出すことで、グローバルルールの形成への足掛かりとすることができる。強みを発揮できる、いまだ満たされていないニーズの充足に、日本は注力すべきである。とりわけ、グローバル経済の要であるワシントンDCを中心に、米国の政策立案担当者を説得し、日本のルールをグローバルルールにすることが重要である。

また、バイオエコノミーを育むため、日本は国外に有するレガシーを活用すべきである。例えば、日本におけるヘルスケアのRWD(リアルワールドデータ)に、米国企業は容易にアクセスできない。そのため、日本企業がRWDを用いて米国に貢献できることを積極的に主張すれば、米国からの投資を得やすくなる。

【産業技術本部】

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