Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年1月26日 No.3576  今後の金融行政の方向性 -金融・資本市場委員会

中島氏

経団連は12月21日、金融・資本市場委員会(太田純委員長、日比野隆司委員長、林田英治委員長)を東京・大手町の経団連会館で開催した。金融庁の中島淳一長官から、今後の金融行政の方向性について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ スタートアップ・中小事業者への支援

スタートアップを含む中小企業においては、融資を受ける際に経営者保証を求められることに抵抗がある。経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向け、保証を徴求する際の手続きの厳格化や金融機関の意識改革に取り組む。金融機関には、保証を外すためにはどのような改善を図る必要があるか事業者に対して具体的に示してもらいたい。ただし、貸し渋りが生じては元も子もないため、経営者保証そのものを制限することはしない。

■ 国民の安定的な資産形成

金融庁では、資本市場の果実を国民が享受できるよう、2022年11月策定の「資産所得倍増プラン」に基づき、安定的な資産形成に向けた取り組みを着実に実施していく。

令和5年度税制改正大綱において、24年以降のNISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充・恒久化の方針が示された。投資枠は、一定の投資信託を対象とする「つみたて投資枠」と、個別株式やより広範囲の投資信託にも投資できる「成長投資枠」の二つに分け、それぞれ従来の制度よりも年間投資枠を拡大するとともに、双方を併用できるようにする。

個々人にふさわしい投資商品を買ってもらうためには、金融リテラシーの向上も欠かせない。24年に官民連携で「金融経済教育推進機構(仮称)」を立ち上げ、金融経済教育の充実や、初心者向けの中立的アドバイザーの見える化に取り組む。

■ 資本市場の活性化

企業開示の充実に向けて、23年3月期から、有価証券報告書においてサステナビリティ情報の開示が求められることとなる。特に、男女間賃金格差など、人的資本、多様性に関する開示が必要になる。

四半期開示に関しては、取引所の規則に基づく四半期決算短信と、金融商品取引法上の四半期報告書に内容面で重複がある。開示の効率化の観点から、第1・第3四半期については決算短信に一本化し、大幅な簡略化を図る。また、監査人によるレビューは任意であり、虚偽記載について、基本的には法律上の直接の罰則の対象とはならない。

■ サステナブルファイナンスの推進

世界的にエネルギーの安定確保が課題になるなか、足元のエネルギー確保をしながら脱炭素に向けて取り組む必要がある。

22年7月には、経団連の支援のもと「サステナビリティ基準委員会」(SSBJ)が発足し、サステナビリティ情報開示について国内基準の開発や国際的な意見発信を行っている。国際基準に日本の実情や考え方を反映させるべく、金融庁も支援したい。

他方、市場機能の発揮に向けて、ESG(環境・社会・ガバナンス)評価・データ提供機関の透明性を高めるべく、22年12月に行動規範を策定した。

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意見交換では、委員から、NISAの拡充や金融リテラシー向上によって、投資が海外ではなく国内に向かうよう、スタートアップなど日本企業の成長力を高めることも重要であるとの指摘があった。

これに対して中島氏は、新たなNISAの成長投資枠でスタートアップを含む上場株式への投資が増えると期待しており、加えて、非上場株式の流動性向上にも取り組んでいくと述べた。他方で、必ずしも国内だけに投資してもらう必要はなく、分散投資によって所得が増え、消費が増えるならば、企業に資金が回っていくとも説明した。

【経済基盤本部】