経団連は1月19日、大阪市内で「関西会員懇談会」を開催した。十倉雅和会長をはじめ副会長らが出席し、会員約400人が参加。「サステイナブルな資本主義を実践し、分厚い中間層の形成を目指す」を基本テーマに懇談した。
開会にあたり、十倉会長は、「2023年も社会課題の解決と持続的な経済成長の実現の両立に力強く取り組むこととしており、『活発な国内投資』と『旺盛な個人消費』を促していく」と決意を述べ、関西の会員からの力強い支援・協力を求めた。
■ 関西経済の活性化に向けて
「関西経済の活性化に向けて」をテーマとする懇談では、大林組の蓮輪賢治社長から関西都市圏一体での活性化施策について、阪急電鉄の嶋田泰夫社長から交通インフラの整備やデジタル技術の活用等を通じた関西地区の成長に向けた取り組みについて発言があった。
これに対し、
- (1)経団連として、地方経済の活性化に向けた協創への取り組みや、地方分権改革の実現に向けた提言取りまとめといった活動を推進していく(永井浩二副会長)
- (2)学生のキャリア形成活動を支援する観点から、また広い意味での「人への投資」を拡充する観点から、質の高いインターンシップの実践に協力してほしい(小路明善副会長)
- (3)2025年大阪・関西万博の開幕まであと2年3カ月となり、同万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」の実現に向けて企業の持つスキルやノウハウを活用するため、引き続き政府や地元自治体、地元経済界と密に連携していく(中村邦晴副会長)
――との発言があった。
■ 産業競争力強化に向けて
「産業競争力強化に向けて」をテーマとする懇談では、エア・ウォーターの豊田喜久夫会長から産業ガス企業としての独自のポートフォリオ変革について、大阪ソーダの寺田健志社長から化学産業としての視点を踏まえた国内製造業の競争力強化について発言があった。
これに対し、
- (1)経団連は、ヘルスケア分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めている。「具体的な利便性を目に見えるかたちで提示する」とともに、最初から完璧を求めるのではなく、及第点から始め、利用しながら改良していくアジャイル的な手法に対して、社会や国民の理解・賛同を得ることが重要である(篠原弘道副会長)
- (2)グリーントランスフォーメーション(GX)の推進には実行と不断のモニタリングが必要だが、GX経済移行債による政府の支援先や、成長志向型カーボンプライシング構想をはじめ、政策の具体化に向けた検討は道半ばである。経団連として、政府によるGXの取り組みの進捗をしっかりと検証していきたい(小堀秀毅副会長)
- (3)「2023年版経営労働政策特別委員会報告」では、「『人への投資』促進を通じたイノベーション創出と生産性向上の実現」を副題とし、「人への投資」を起点としてイノベーション創出を通じた労働生産性の向上を図り、その成長の果実を適切に分配することの必要性、賃金引き上げのモメンタムを維持・強化して「成長と分配の好循環」の実現に寄与することの重要性を指摘した(大橋徹二副会長)
- (4)経団連は、直面する複合的な危機を克服し、持続的に成長するため、企業行動のバージョンアップと加速化が必要であるとの考えから、サステイナブルな資本主義の確立に向けて「企業行動憲章 実行の手引き」を改訂した(平野信行副会長)
- (5)産業競争力強化のためには、途上国への開発協力を通じて、新しい市場を開拓・創造していくことが必要である。わが国が途上国に対して行う開発協力の理念や重点政策等を定めた「開発協力大綱」の改定にあわせ、特にGX、DXの推進を優先すべきとの観点から、経団連の意見を公表した(遠藤信博副会長)
――との発言があった。
また、住友電気工業の松本正義会長は、大阪・関西万博の成功に向け「より一層の機運醸成に向けた活動が必要」と述べ、経団連の支援を引き続き求めた。また、「三方よし・民の力」と「地方分権・広域行政」について、「活動の底流をなす事業」として今後も重点的に取り組んでいく旨を強調するとともに、賃上げの流れの維持・強化に向けた対応にも前向きな姿勢を示した。
最後に、十倉会長は、地域の魅力の一層の向上や、日本の競争力強化、強靱で強固な経済の実現にしっかりと取り組むとあらためて決意を述べ、会員間の緊密な連携を呼びかけた。
【総務本部】