Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年2月23日 No.3580  ミツォタキス・ギリシャ首相一行との懇談会を開催

経団連(十倉雅和会長)は1月30日、東京・大手町の経団連会館で、ギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相および政財界一行との懇談会を開催した。経団連からは、東原敏昭副会長・ヨーロッパ地域委員長、篠原弘道副会長、清水章ヨーロッパ地域委員会企画部会長らが出席した。
ミツォタキス首相の発言概要は次のとおり。

ミツォタキス首相(中央)

2022年10月、経団連の訪欧ミッションをアテネで迎えた。今般、そのフォローアップの意見交換ができ、うれしく思う。ギリシャ首相の訪日は05年以来である。ギリシャは09年に経済危機に直面した。首相に就任して以降、財政改革や減税、不良債権処理、官僚主義の打破など、さまざまな改革を推進してきた。

この数年間は、新型コロナウイルスの影響があるにもかかわらず、欧州内でも高水準の経済成長を遂げている。22年、エコノミスト誌において、複数の経済指標を総合評価したランキングで第1位となった。ギリシャの格付けも23年中に投資適格級に戻る見込みである。経済危機を乗り越えたギリシャは、ビジネス・フレンドリーな政策を進め、投資先として関心を集めており、22年は過去最高の投資受け入れ額を記録した。ギリシャは、三大陸が交わる場所に位置しており、欧州連合(EU)単一市場の一部としてだけでなく、湾岸諸国やアフリカへの玄関口として、地理的な魅力も高い。この春に予定されている総選挙では、政権与党の優勢が見込まれており、引き続き投資誘致に取り組んでいく。ギリシャは一帯一路構想を通じて中国との関係を築いてきたが、近年は中国からの関心も薄れてきている。現在はインド太平洋地域との経済関係の発展を図っており、日本からの投資拡大を期待している。

新型コロナのもとでの危機対応の一環として、デジタル化を進め、公共サービスのデジタル化やデータクラウドの設立、デジタル人材の育成に注力してきた。近年、米国の大手IT企業が相次いで投資を決定し、データセンターを設立している。主にデジタル分野について、高度人材を豊富に抱えており、他の欧州地域と比較して、その賃金はまだ低い。

また、ウクライナ戦争を受け、世界的に課題となっているエネルギー安全保障について、LNG基地を有しており、周辺地域におけるエネルギー・ハブとして、欧州の脱ロシア依存に向けて大きな役割を果たせる。ギリシャ北東部では、新たにLNG基地を建設し、ロシアがガスの供給を停止したブルガリアをはじめ、主にバルカン諸国へLNGを融通する。また、風力発電や太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入を拡大しており、電力の輸出も視野に入れている。欧州域内の送電網の整備や再生可能エネルギーの拡大について、日本企業との協力を期待している。

海洋国家であるギリシャにとって、ルールに基づく開かれた国際秩序の堅持は最優先課題であり、武力行使による一方的な現状変更に対抗する。また、ギリシャは経済危機を乗り越え、EUや北大西洋条約機構(NATO)においても主導的な役割を果たしている。例えば、EUに対しては、復興基金の創設、デジタルCOVID証明書の運用、LNGの上限価格の設定等を働きかけた経緯がある。過去のイメージにとらわれることなく、ギリシャを投資先の候補として検討してほしい。

【国際経済本部】