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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年2月23日 No.3580 春季労使交渉・協議の焦点〈4〉 -エンゲージメントと働き方改革

春季労使交渉・協議が本格化するなか、5回にわたり、同交渉・協議の焦点等を解説する。4回目は、エンゲージメントと働き方改革を取り上げる。

Q まず、エンゲージメントとは何ですか。

A さまざまな定義がありますが、経団連は、「働き手にとって組織目標の達成と自らの成長の方向性が一致し、『働きがい』や『働きやすさ』を感じられる職場環境のなかで、組織や仕事に主体的に貢献する意欲や姿勢を表す概念」と整理しています。働き手と組織のベクトルを合わせることで、働き手の主体性や意欲を喚起することの重要性を説いています。

Q エンゲージメントが働き方改革とどう関係しているのでしょうか。

A 企業の持続的な成長には、働き方改革を通じた労働生産性の向上が不可欠です。そのためには、(1)インプット(労働投入)の効率化(2)アウトプット(付加価値)の最大化――を図る必要があります。経団連では、(1)を働き方改革「フェーズⅠ」、(2)を「フェーズⅡ」と呼んでいます。その成否は、実際に働き方改革を行う働き手のエンゲージメントを高められるかにかかっています。企業は、エンゲージメント向上に資する働き方改革を「人への投資」と位置付けて取り組むことが求められています。

エンゲージメントと労働生産性を高める働き方改革

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Q エンゲージメントを高めるにはどうすればよいでしょうか。

A 経団連「2022年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査」で、「目標や考課・処遇等に関する社員と上長との対話」を実施している企業(90.1%)のうち、エンゲージメント向上に「効果がみられる」との回答が9割(90.4%)を占めているように、社員との積極的なコミュニケーションが基本となります。さらに、「企業理念・事業目的の浸透」に取り組んでいる企業(89.1%)では、その9割超(90.9%)が効果を感じていると回答していることを踏まえると、内的報酬の観点からのアプローチも効果的といえます。
また、エンゲージメントのさらなる向上へとつなげていくため、イノベーション創出や労働生産性の向上に寄与しているのかどうか、各種施策の効果を測定・評価することが肝要です。

Q 働き方改革の「フェーズⅠ」について、さらに教えてください。

A フェーズⅠは、労働時間の削減や年次有給休暇の取得促進、コロナ禍への対応としての業務見直しなどによって着実に進展しています。働きやすい職場づくり、仕事と育児・介護との両立の観点からも重要性が増しています。
他方で、人手不足への対応に苦慮している中小企業が、労働時間の削減や業務効率化等を図ることは容易ではありません。自社と同規模の企業事例を参考に、デジタル技術の導入・活用などを進めていくことが考えられます。

Q 「フェーズⅡ」を深化させるポイントは何ですか。

A フェーズⅡの目的である付加価値の最大化を図るには、イノベーション創出が不可欠であり、その担い手は社員、つまり「人」です。企業は、多様な働き手に配慮しながら、そのエンゲージメントを高めていくことが重要です。時間外労働や異動の有無を働き手が選択できる制度の導入、グループ企業内での副業・兼業の推奨、ウエアラブル端末による健康管理の支援といった例も参考に取り組んでいくことが有益といえます。
春季労使交渉などの機会をとらえ、企業労使が、エンゲージメントを高める観点から話し合い、自社の実情に適した働き方改革を推進することで生産性を向上させ、その成長の成果を賃金引き上げなどによって働き手に適切に分配していくことが求められています。

【労働政策本部】


春季労使交渉・協議の焦点(全5回)
〈1〉連合の春季生活闘争方針
〈2〉経営側の基本スタンス
〈3〉円滑な労働移動
〈4〉エンゲージメントと働き方改革
〈5〉労働時間制度

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