Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月2日 No.3581  日米関係の現状と課題 -アメリカ委員会連携強化部会

佐伯氏

経団連のアメリカ委員会連携強化部会(豊川由里亜部会長)は2月7日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。経済産業省通商政策局の佐伯耕三米州課長から、日米関係の現状と課題について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 経済安全保障の重要性の高まり

2023年1月の日米首脳会談では、G7広島サミットも見据え、気候変動等の地球規模の課題を含め、幅広く議論された。そのうちの重要なテーマの一つが、経済安全保障である。

米国においては、軍民融合戦略のもと軍事能力を高める中国の脅威が強く意識され、機微技術に関する輸出管理等が強化されている。また、経済的威圧に対抗すべく、G7を中心とする同志国がサプライチェーンの強靱化に向けて協力を強化するなど、経済安全保障の重要性は一層高まっている。

■ 対中関係と米国政治

米国では、上下両院がねじれ、各種法案の成立が難しいといわれているなかでも、対中政策については、超党派で活発な立法活動が行われている。下院においては、超党派で構成される中国特別委員会の設置を決定した。ここでは、重要なサプライチェーン構築に向けた政策の推進や、台湾への支援などが議論される見込みである。また、国防授権法においても、関係省庁から成る「対中タスクフォース」を設置すること等、対中条項が盛り込まれている。加えて、こうした議会の動きを受け、22年10月には、商務省が、中国向け半導体等の輸出管理の強化を発表した。

■ 日本の立ち位置

このようななか、日本は、日米経済政策協議委員会(経済版「2+2」)の閣僚級会合等において、サプライチェーン強靱化など経済安全保障分野での米国との協力の推進を議論している。同会合の成果文書として、共同声明に加え、個別案件ごとの行動計画も発出され、重要・新興技術と重要インフラの育成・保護に向けた日米の協力等が明記された。また、1月の西村康稔経済産業大臣とレモンド商務長官との会談においても、経済安全保障分野で協力することの重要性で一致した。このほか、タイ通商代表との間では、協力覚書に署名し、サプライチェーンにおける人権尊重に向けて、ベストプラクティスを共有すること等を約束した。

22年5月に米国が立ち上げたインド太平洋経済枠組み(IPEF)は、市場アクセスを含まないものの、経済安全保障の観点から重要性が高い。実際、IPEFの交渉分野の一つが、「サプライチェーン」であり、途絶時の協力体制の構築や、インフラ整備等での参加国の協調を目指す。日本としては、米国とアジア諸国の間に立って議論をリードすることで、IPEFについて具体的な成果を早期に出せるよう追求しながら、交渉のモメンタムを維持することが重要である。

【国際経済本部】