経団連は1月31日、バイオエコノミー委員会企画部会(藤原尚也部会長)を開催した。Greater Tokyo Biocommunity(GTB)の塚本芳昭事務局長とバイオコミュニティ関西(BiocK)の坂田恒昭副委員長兼統括コーディネーターから、わが国のバイオコミュニティーの現状と取り組みについて説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ わが国の現状と東京圏のバイオ分野の強み
政府のバイオ戦略では、2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現すべく、全国に多様なバイオコミュニティーを形成し、各市場領域でバリューチェーンを構築することとしている。この戦略目標のもと、わが国は国際的に活躍するグローバルバイオコミュニティーとして、東京圏のGTBと関西圏のBiocKを認定している。このほか地域で活躍する拠点として、北海道、鶴岡、長岡、広島、福岡、沖縄の六つのバイオコミュニティーが政府の認定を受けて活動している。GTBの拠点には、つくば、柏の葉、千葉・かずさ、日本橋、本郷・お茶の水・東京駅エリア、川崎、横浜、湘南があり、バイオ分野の有望な研究者や投資先が集積している。
■ GTBの取り組み
GTBは、30年までにバイオエコノミーの市場規模を1.5倍にするために、KPI(Key Performance Indicator)として、東京に本社を置くバイオ関連5団体(注1)加盟企業の売上高(20年時点で103兆円)を30年に147兆円(年3.6%成長)へと伸ばすことを掲げている。また、サブKPIとして、バイオベンチャーへの投資額を30年までに約10倍(年3500億円)に増額することも挙げている。
GTBはこうした目標を達成するために、バリューチェーンの流れに沿って、共同研究の促進やベンチャー企業の育成、生産設備への投資促進、ネットワーク・人材・バイオイノベーション推進拠点の基盤強化を行っている。また、国内外の連携機関との交流や、海外からの投資拡大を図る取り組みも展開している。
■ 関西圏のバイオ分野の強み
関西地域には医薬品・医療機器の研究開発拠点やものづくり拠点、バイオ分野に強みを持つ大学に加え、再生医療や免疫分野の研究者が集積しているという強みがある。富岳などの計算機インフラもある。このため、バイオ分野におけるバリューチェーンの強化にあたっては、文部科学省や経済産業省の既存の補助金プログラムも活用しつつ、京都、大阪、神戸の3大学のシーズを発掘しながら、オープンイノベーションを起こすことが重要と考えている。
■ BiocKの取り組み
BiocKは、コミュニティーの中心に産業界を据えて、京都、神戸、大阪に集積するリソースの連携に注力している。具体的には、イノベーションの促進やネットワークの形成支援、国内外への情報発信などを行っている。また、スタートアップ支援や人材確保、バイオファウンドリー(注2)製造設備の整備、データの連携・利活用にも取り組んでいる。
このほか、GTBをはじめとする国内のバイオコミュニティーや主に欧米のバイオクラスター、大使館・領事館(19カ国、31機関)と連携を図っている。バイオコミュニティーの強化には、特に国際連携の視点が重要である。そのため、25年の大阪・関西万博閉幕後も念頭に置きつつ、同万博でわが国のバイオエコノミーを国際的にPRし、国内外からリソースが継続的に入ってくるようにする必要がある。
(注1)バイオインダストリー協会、再生医療イノベーションフォーラム、日本製薬工業協会、農林水産・食品産業技術振興協会、日本バイオテク協議会
(注2)合成生物学等の技術開発に必要な装置群を集積・オートメーション化した技術パッケージ
【産業技術本部】