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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月9日 No.3582 最近のEUの政策動向 -パケ駐日EU大使から聴く/ヨーロッパ地域委員会

パケ大使

経団連のヨーロッパ地域委員会(東原敏昭委員長、佐藤義雄委員長)は2月15日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。ジャン=エリック・パケ駐日欧州連合(EU)代表部代表・特命全権大使から、最近のEUの政策動向と今後の日本との連携への期待について説明を聴いた。概要は次のとおり。

ロシアによるウクライナ侵略からほぼ1年が経過し、ヨーロッパ域内では安全保障やエネルギーをめぐる危機が続いている。日本も、中国・台湾関係をめぐる緊張の高まりや、北朝鮮に対する警戒などの地政学上の課題に直面し、世界は不安定な状況にあると言わざるを得ない。このような状況下で安全保障のための枠組みを強化すべく、日EU間のさらなる連携強化が求められる。

ヨーロッパ諸国は、ロシアへのエネルギー依存度の高さを再認識した。迅速な日米欧連携のもと、日本が自国向けの液化天然ガス(LNG)の一部を欧州に融通したことは、ロシア依存からの脱却に向けた大きなメッセージになったと考える。EUは、省エネや再生可能エネルギーへの投資を通じ、ロシア産エネルギーの代替措置を講じている。これを契機にエネルギートランスフォーメーションを加速させる。

ロシアに加え、中国との関係のあり方についても熟考する必要がある。日欧ともに、中国とは何十年にもわたって相互に貿易投資を行ってきており、相互依存関係にある。レアアース、エネルギー資源のほか、太陽光発電技術などグリーントランジションを実現するうえでも中国の役割は大きい。中国とはデカップリングするのではなく、リスクを軽減することが重要であり、同国の不公正な貿易慣行、補助金政策等に日欧が連携して対処することが求められる。

日本がG7議長国として、経済安全保障をアジェンダに加えたことを歓迎する。重要物資のサプライチェーンの強靱化について、日欧協力の余地は大きい。例えば、日本は令和4年度第2次補正予算に半導体支援策を盛り込んでいる。また、2ナノメートル以下の先端半導体の開発、量産を目的とする企業が、日本の主要企業によって設立され、ベルギーに拠点を置く半導体研究機関であるIMEC(Interuniversity Microelectronics Centre)と協力協定を締結している。従来、日欧関係は日米、米欧関係に比べて必ずしも強固ではないと感じていた。日欧が先端技術分野で中心的なプレーヤーとなるためにも、今後このような連携に期待したい。駐日大使として、日EUの産学官連携を推進し、相互に付加価値を生み出せるよう努力したい。

【国際経済本部】

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