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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月23日 No.3584 今後のサプライチェーンのあるべき姿と課題 -サプライチェーン委員会

松島氏

経団連は2月22日、サプライチェーン委員会(立石文雄委員長、山内雅喜委員長)を開催した。クラウドサービス推進機構の松島桂樹理事長から、「今後のサプライチェーンのあるべき姿と課題~中小企業との企業間連携の展望」について、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 中小企業が目指すべきDXの方向性

長年、岐阜県において、中小企業をはじめ県内産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に関わってきた。その経験も踏まえ、中小企業の目指すべきDXは、デジタルを活用して事業の再構築を行うことと考えている。中小企業が価格転嫁できる事業に集中することができれば、わが国の産業構造・サプライチェーンの変革につながる。

その成功には、事業再構築をデザインする人材、実施を主導する人材が必要だが、外部から確保するのは容易でない。内部人材の活用が重要であり、その余力を創出するためにも、IoTによる現場の生産性向上、デジタルインボイスによるバックオフィスの生産性向上を進めることが欠かせない。

■ IoTからDXへ

「岐阜県IoTコンソーシアム」では、IoT活用プロジェクトへの支援を進めている。IoT活用によるプレス設備の自律化や、IoTとテレワークの組み合わせによるリモート検査の実現などの成功例が出てきている。

IoT導入によって、現場の見える化が進むと、利益の見える化、つまり、もうかる製品がわかるようになる。データに基づく価格交渉力をもつことで、自社にとって高い利益となる取引先を選べるようになる。このように中小企業がIoT導入によって自らデータを持ち、経営に結び付けることが重要である。

■ デジタルインボイスによる企業間業務連携

さらに、サプライチェーン全体でデジタル化・データ連携を進めることができれば社会課題の解決にも寄与できる。サプライチェーン全体の脱炭素・カーボンニュートラルを目指すうえでも期待が大きい。

そうしたなか、2023年10月のインボイス制度導入に際し、デジタルインボイスを企業間業務連携の発火点にすべきである。岐阜県では、県主導で金融機関とも連携し、「データ連携共通基盤」がデジタルインボイスにかかわる発行・送信・受信・保管を代行し、注文から支払いまでを自動化するモデルを進めている。デジタル化に遅れる中小企業も、地銀のインターネットバンキングシステムを利用するだけでデジタルインボイスを発行できる。同基盤はデジタルインボイスの国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠しており、ZEDI(全銀EDI〈Electronic Data Interchange〉システム)を介した接続を行っている。幅広い関係者が連携するこの「岐阜モデル」を通じて、県内取引のデジタル化を促進していきたい。

■ 中小企業におけるDXの進め方

岐阜県は、DXを経営の「からくり」づくり、すなわち人が何もしなくても自動で動くシステムづくりととらえている。からくりのデザイナーとして人材の育成が欠かせない。一般にリスキリングは、雇用流動性を高め、生産性の高い大企業や都市への人材の移動が想定されている。しかし、中小企業では、企業内での人材の流動性確保という視点から、スキル刷新を進める視点が重要である。

【産業政策本部】

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